リオン株式会社
News Release

2012年11月20日

  

〜当社開発の「水中の生物粒子測定装置」を用いて〜
人工透析液の汚染管理における
細菌のリアルタイムモニタリングシステムを共同開発


 リオンでは、千葉科学大学危機管理学部医療危機管理学科の楢村友隆助教と共同で、人工透析液の汚染管理における細菌のリアルタイムモニタリングシステムを開発しました。
 当社が開発した「水中の生物粒子測定装置」を用いたモニタリングシステムは、培養や染色などの前処理操作を行うことなく、迅速に透析液中の細菌現存量を把握できるため、透析液の汚染管理に大きく貢献すると考えています。

◇開発の背景
 現在、人工透析治療に用いる透析液は、各施設にて調合作成され、透析液供給装置を経て直ちに人工腎臓に供給されます。1回の治療に使用する透析液の量は約150Lにもおよび、半透膜でできたダイアライザーと呼ばれる人工腎臓を介して血液と透析液が触れ合い、透析液の一部は血液中に移行します。
 そのため、透析液の汚染管理には細心の配慮がなされていますが、培養法を代表とする従来までの細菌検出方法では、結果を即座にフィードバックすることができず、安全面で課題が残っていました。さらに、近年普及が進みつつあるオンラインHDF(血液透析濾過法)では、体内に大量の透析液を注入するため、より厳密で迅速な透析液の汚染管理が求められています。
 これらの課題を解決するために、迅速・高精度をキーワードに蛍光染色法などを中心に検討が行われてきましたが、現状では透析液のサンプリングや染色などの前処理操作を除外することができず、リアルタイムに細菌をモニタリングすることは困難な状況でした。そこで、培養操作に加え、サンプリングや染色などの前処理操作を必要としない生物粒子測定装置を使用した細菌のリアルタイムモニタリングシステムの開発を行いました。

◇開発装置について
 「水中の生物粒子測定装置」は、装置内フローセルの検出部※1に、レーザーを連続的に照射し、流水中の微粒子から得られる散乱光と、レーザ光照射により励起された細菌の自家蛍光※2を、それぞれ散乱光検出器と蛍光検出器にて分光・検出し、細菌を含む微粒子の数と細菌の数をリアルタイムに計数、表示します。

◇開発システムと透析装置の構成
 透析液供給装置で製造された透析液中に存在する細菌の数を計測します。

 

◇試験方法および結果

1) 透析液中に標準菌・透析液分離株※3を懸濁※4させ、「水中の生物粒子測定装置」と培養法とを比較した結果、優れた検出能を有することが示されました。
2) 透析装置に接続してリアルタイムモニタリングを行うことで、突発的に起こりうる汚染を検知できることが確認されました。

◇学会発表について
 本件につきましては、国際血液浄化学会(2012/9/6〜9/8)、日本防菌防黴学会(2012/9/11〜9/12)にて発表しています。なお、国際血液浄化学会では、優秀抄録賞を受賞しています。

◇今後の展開
 リオンでは、人工透析液の汚染管理における細菌のリアルタイムモニタリングシステムの共同開発を受け、実際の透析現場での活用を目指した実用化に取り組み、将来的には、透析機器メーカーなどへの提案活動を進めていきます。

◇用語解説
※1 :フローセル ・・・ 試料の透析液を粒子検出部に導くための石英製の流路です。
※2 :細菌から得られる細菌の自家蛍光 ・・・ 生物細胞中には、特定の波長の光を当てると蛍光を発する「自家蛍光物質」と呼ばれる物質があります。
※3 :標準菌・透析液分離株 ・・・ 標準菌とは、NBRC(NITE Biological Resource Center)などの微生物の供与機関に登録された、素性の分かっている菌。透析液分離株とは、透析液から実際に抽出した菌を実験用に培養したもの。
※4 :懸濁(けんだく) ・・・ 液体中に粒子などの固体が分散した状態のことです。

◇水中の生物粒子測定装置

 

 



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