医薬品から半導体産業まで、さまざまな産業を支えているリオンの微粒子計測器。気中、液中微粒子計の開発を経て近年では生物粒子計数器の開発にも成功。ここでは、進化する微粒子計測技術の今とこれからを紹介する。「光散乱式気中微粒子計数器」KC-22B(2001年)「KC-22B」 は、空気中に浮遊する微粒子の粒径および個数を光散乱方式により測定し、粒子個数濃度を求める装置。小型で軽量、高出力で長寿命、安定性の良い光学系を採用。光源には半導体レーザ励起固体レーザを採用し、優れた耐久性を実現。様々な分野で活躍するリオンの微粒子計測器 微粒子の散乱光を観測することで、空中に浮かぶ微粒子の個数を測定する計測器が、気中微粒子計だ。第2次世界大戦中の原子爆弾の製造時に、放射能を帯びた浮遊微粒子から作業者を保護するために開発されたこの技術を、1973年、いち早く日本に紹介したのがリオンだった。 当初は、大気汚染や室内の環境衛生問題に対応する測定機器として、アメリカ製の装置を輸入していたが、品質面や保守対応において問題があり、1977年には、国内企業で初めて自社製品「KC-01」を開発、発売。「KC-01」の最小可測粒径は0.3 µmと、当時としてはトップレベルの性能でありながら、小型で100万円を切る価格だったために大変好評で、製薬会社のクリーンルーム清浄度管理用などの市場で売り上げを伸ばした。 最大のユーザーは当時急激に成長しはじめていた半導体産業。半導体の製造現場では、シリコンウェハーに浮遊粒子が付着することで、歩留まりが大幅に低下するため、微粒子計による清浄度管理が、品質と利益率を確保する上で不可欠だった。 そして、1984年には国内初の液中微粒子計を開発。これは注射剤をはじめ、液中の粒子を計測する装置を望む声が医薬品分野から高まったことを受けたもの。「岐阜県飛騨市神岡町の地下1000 mに設置された素粒子ニュートリノの巨大観測装置『スーパーカミオカンデ』にもリオンの液中微粒子計が使用されています。このことはメディアでも報道され、当社の技術力の高さがより広く社会に認められました」 現在では、海外企業も大きな顧客だという。特にアジア圏の半導体産業では、日本企業の競争力を支えたリオンの測定器が高く評価を受けている。気中微粒子計は国際宇宙ステーションの日本実験棟である『きぼう』でも使用された。「精度の高さ」「堅牢性」に「最小可測粒径」という武器が加わった 2007年には米国アップル社の「iPhone」発売と前後して、エレクトロニクス業界ではパソコンやスマートフォン、タブレット端末などが市場を席巻。この消費拡大に伴い、日本のメーカーは半導体関連の生産拠点を海外にシフトする。リオンでは、1990年代から海外に移転した半導体関連の日系企業に向けて営業を強化。ただ、国内外いずれも、半導体関連産業での微粒子計測器のニーズは「従前以上に微小な粒子を安定的に検出する」という1点だけだった。「微粒子計測器の基本原理は変わらないので、競合他社がこぞって最小可測粒径微小化の世界競争に参入しました。我が社もその競争に後れを取ることもあったのですが、より高精度な計測ができる微粒子計測器の開発を戦略的に進めたのです」 2009年には最小可測粒径0.05 µmの超純水中の微粒子を監視するとともに、センサ、コントローラ、流量計を一体化したオールインワンタイプの純水中微粒子計数器「KL-30A」を発売。その技術を応用し、フッ化水素酸を中心とした薬液中の0.05 µmの微小粒子を検出するために、サファイアセルを採用した光散乱式液中粒子検出器「KS-18F」を開発した。2013年には、当時の世界最小可測粒径である0.03 µmの粒子を検出する光散乱式液中粒子検出器「KS-19F」の開発に成功。「リオンの持てる技術を結集して開発にのぞみました。リオンが長い歴史の中で培ってきた強みは『精度の高さ』と『簡単には故障しない堅牢性』だと感じています」水上 敬技術開発センター所属。微粒子計の開発に従事する傍ら、気中微粒子計の校正技術に関する研究を産業技術総合研究所と共同で行なっている。取材・文/横田 可奈社会を支える[微粒子計測器]の世界》》FROM NOW ONリオンの[いま]と[これから]10
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