RION Techinical Journal Vol.1
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— それでは、技術者にふさわしい素養とはどのようなものだと考えますか?ある種のプライドが高くなければ技術者として伸びていかないのだろうと思っています。言い換えれば負けず嫌い(笑)。たとえば他社の優れた製品を眺めた時、それを悔しがり、自社製品を改良して追い越していこうという反骨心。このようにリオンとしてのプライドを常に意識することが、質の高い製品開発には不可欠なのだと感じています。基本的に技術者には「知らないことはない」くらいのプライドというか自覚を持ってお客様や製品に向き合ってほしい。もし知らない、わからないことがあればすぐに知識や経験を習得して自分自身を鍛え上げていく。そのためにはやっぱり負けず嫌いの精神が大切ですし、そのような技術者の気概が、社会のため、人のため役立つ製品づくりにつながっていくのだと考えています。お客様の声に耳を傾けることから社会を支えるアイデアは生まれる— 技術開発センターとしてのユニークな取り組みなどは何かありますか?「20%活動」をセンター内で推進しています。20%、すなわち一週間平日5日の勤務のうち1日は計画業務外の研究を各自、進めるという内容です。現状、進めている業務以外にやってみたいこと、気になっていることに挑戦してみましょうと。ひとつの目的は興味の幅を拡げて、今は世の中に存在しないニーズ、技術、製品について夢想、妄想、想像してみる必要性。そしてもうひとつの目的は気分転換ですね。20%活動に関しては成果を求めていません。ですから伸び伸びと自由に自分の可能性を拡張してほしい。そのためにはリフレッシュも不可欠ですからね。— 技術開発センターとして現在進行中の研究や、未来へつながる新製品開発計画について聞かせてください。社外秘のものが多く、詳しく話せないものがほとんどですが、たとえば医療関連では病気などで声帯がなくなってしまった人のための発声を補助する仕組みづくり。人間が発する言葉、会話の抑揚を自然に表現するような研究です。もうひとつは、水中にいる微生物を検出、監視する仕組みづくりですね。昨今の異常気象で予想を超えたレベルで微生物が大量発生し、水質に影響を及ぼす例が増えています。この水質管理システムやそこに利用するコア・テクノロジーはリオンの知見が十二分に活かせる分野なので、今後、技術開発のスピードは加速していくでしょう。— 今後、技術開発センターはどのような方向に向かっていこうと考えていますか?様々な目標がありますが、たとえばリオン全体で掲げている「2030年 暮らしの中の補聴器」というビジョンに沿った開発はひとつの方向性です。補聴器を必要とする方たちが社会生活の中で不自由を感じないように仕組みづくりをしていこうと。病院の待合室、駅の構内、銀行の中など様々な場所でのアナウンス、呼び出しなど、聴覚を経路とした情報伝達はたくさんあります。そのような情報に対して、補聴器を利用する方たちが上手くアクセスできるような社会を作っていく。そのために補聴器はどうあるべきかという理想を実現していくための無線化、スマホとの連携などといった技術開発です。別の方向性としてはAIを活用した機器の充実ですね。そのためにはAIの知見をさらに重ねていく必要があり、リオン全体としても重点課題に挙げている部分です。さらに言えば、顧客ファーストの意識をより高めていくことでしょうか。新技術、新製品の開発はリオン独自で行うものももちろんありますが、実はお客様の要望から生まれるものも少なく有りません。たとえば長年お付き合いさせていただいている鉄道会社さんからは地震を検知し、安全な鉄道の運行に寄与するシステムづくりの要望があったからこそ、現在、稼働中のシステムが実現できました。このように、お客様との密な関係から「こんなことはできないか」と要望をいただき、その課題をリオンが解決していく中で、画期的な技術や製品が生まれるのです。お客様の声に耳を澄ますということは技術開発の基本。個々のお客様から頼れるパートナーだと信頼され続けることが、広く社会を支えるというリオンの大きな目標につながっていくのだと考えています。 岩橋 清勝技術開発センター長。入社直後から騒音、振動計測に使われるデジタル式測定、分析器の開発に携わる。音響振動の技術部門長、環境機器事業部長などを歴任した後、現職に着任。技術開発部門を率いるリオン躍進のキーマン。13

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