RION Techinical Journal Vol.3
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える振動ピックアップの開発がスタートした。 当初は汎用ピックアップにも使われるセラミックスの特性を改良し、温度特性を高めた製品が開発された。それが、「PV-44A]、「PV-65」であり、いずれも260℃までの環境で使用可能だ。 次に進められたのが、原子力発電所のような、より高温下の環境でも使用できるピックアップの開発である。要求される温度特性は300℃、このレベルになると単なるセラミックスの改善だけでは必要な性能を満足することができない。問題を解決したのは、蓄積された技術力から生まれたアイデアだ。単一のセラミックスではなく、種類の異なるセラミックスを組み合わせる。卓越した発想により要求される温度性能をクリアし、且つ過酷な環境でも信頼性を維持するためのノウハウをつぎ込んだのが「PV-63」シリーズであり他社の追随を許さない。 原子力発電所内部は特殊な環境であるため、圧電素子だけでなくコネクターやケーブルも特注品となる。開発時には、γ線などの放射線試験や、諸々の耐久性などを確認した上で原発メーカーに供給している。常にゴールを明確に設定し、開発に邁進する 「これまでに当社が開発してきた製品群は、いずれも最初に理想像を明確に描いた上で、培われてきた技術力をフル活用し、ゴールに向かって一直線に進む。そんなイメージがあります」と、足立大は製品開発の特長を語る。 現在、ベストセラー製品となっているのは小型ピックアップの「PV-90B」、小型化を求めるニーズに対応して誕生した製品だ。発売以来40年を経過し、自動車、家電、部品開発などのメーカーで使われ続けている。小型化の中でも工夫をこらし、ICを内蔵して170℃まで高温対応可能とした「PV-91C」もヒット製品となった。 「求められているのは、決して振動ピックアップではありません。顧客のニーズはあくまでも“振動を正確に測定すること”に尽きるのです。このニーズこそが、当社の製品開発の永遠の原点です」と、下村は締めくくった。下村 和宏技術開発センター 要素技術開発室。一貫して振動計測器の開発に携わり、衝撃の測定、加速度ピックアップにまつわる知識、経験、技術においてはリオン随一。三次元空間情報による異常振動の解析や、単軸センサによる二次元空間振動の測定についてなど、数々の論文発表にも尽力。足立 大技術開発センター 要素技術開発室 音響・振動センサ開発G。下村と同じく振動計測器の開発、加速度ピックアップの技術革新などに尽力。日本建築学会 環境振動測定分析小委員会など社外との連携にも注力し、振動計測分野において幅広く活動を続ける。9【PV-95】せん断構造で比較的小型、汎用の標準的なピックアップ。使用温度範囲は−50℃から最高160℃までに対応。ケース材料にはチタンを採用している。【PV-90B】せん断構造で軽量の小型ピックアップで、軽量構造物、モード解析などの測定に適している。使用温度範囲は−50 ℃から最高160℃までに対応している。ケース材料にはチタンを採用。振動ピックアップの校正振動ピックアップは、極めて安定的なセンサーであり、その特性は10年で1%程度しか変化しない。とはいえ、使用頻度が高い場合などは、定期的な校正が、取得したデータの信頼性を担保するために欠かせない。

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