関わるなかで、とりわけ浄水場への導入についてソフトウェアの観点からどのような難しさ、面白さがあるのか、聞いてみた。「現場によって条件が全く異なるのでそのような状況にソフト面で対応するのが難しく、面白くもあります。高温多湿の環境や、時にはシステムが水を直接浴びてしまう環境。それまでの計測器ではあり得なかった状況で、いかにシステムをうまく機能させていくか。これをソフト面でクリアしていくのが仕事であり、面白さでもある。しかも今回は今後の未来にも関わる開発だった点が好奇心をかき立てました」 現在は浄水場において、ある程度特定された物質を計測するに留まるが、今後、利用される箇所を拡張していくにはどんな物質がその水中に含まれているかを瞬時に判別する必要性が生じる。そのためにはシステムとしての抜本的な進歩が不可欠であり、田中はその部分に好奇心を抱いたというのである。「ひょっとすると機械学習(AI)を活用する事によって、植物プランクトンの種類をある程度判別し、その数を計測するということができるようになるかもしれません。そのようなシステムの開発はまだ先になると思いますが、やはりエンジニアとしては強い興味を持つ部分ですし、それが達成できれば社会においてさらに多くの分野で利用される製品を提供できるかもしれません」 構想段階から試作機の製作なども行っていた関本だったが、市場で販売する製品の本格的な製作は専門のチームで行われていった。そしてチームの中で組み立て、改良について関わったうちの一人、三宮尚志も、計測の対象である水がこれまでとは異質のものであった部分にこう言及した。「たとえば半導体製造の現場などで使われる既存の微粒子計測器は、限りなく純度の高い水(超純水)を測定します。つまり、測定対象の液体が極めてきれいな水なので、計測器まわりの配管や計測器本体のセンサー部が汚染されることはほとんどありません。ところが浄水場で計測対象となる液体は、原水と呼ばれる河川やダム湖等から送られてくる、水道水の元になる水で、砂や藻類、さらに多様なプランクトンが混入している不純物の0020040060080010002004006008001000散乱光(ch)蛍光(ch)vvtt0.7µm0.5µmthresholdtvLight sourceLight sourceScattered lightdetectorScattered lightdetectorFluorescencedetectorLiquid ow (10 ml/min.)Liquid ow (10 ml/min.)Flow cellFlow cellTrapTrapLensLensLensLensPhotomultiplierLensLensLaserPhotodiodePhotodiodeDichroic mirror(410nm)Laser(405 nm)Long pass lterShort pass lterLensX軸Y軸0.5 µm0.6 µm0.7 µm1.0 µm2.0 µm2503512345567823451(散布図表示)植物プランクトンカウンタの検出部構造検出部は左図のような特徴を持つ。光源には蛍光物質を励起させる波長のレーザーを用い、散乱光と蛍光を検出する2 つの受光部を持つ。蛍光の受光部には検出対象となる蛍光物質の蛍光波長帯を通過させる光学フィルタが装着されている。制御ソフトウェア田中が構築したプログラムによって、植物プランクトンカウンタでは、図のような表示によってプランクトンの数を知らせてくれる。グラフでは、計数結果の推移を明瞭に表示できる。自動希釈装置自動希釈装置は浄水場の原水などの高濃度試料を任意の倍率で自動希釈することができる。これにより、浄水場の濃度が大きく異なるすべての工程水を連続的に自動で測定することが可能となる。一般的な光散乱式液中粒子計数器の検出部構造植物プランクトンカウンタの検出部構造4三宮 尚志微粒子計測器事業部 新規事業推進室。1993年入社以来、微粒子計測器一筋。かつては生産ラインでハイエンドの微粒子計測器製造に関わり、今回のプロジェクトでは初期段階から実機製作に関わる。田中 勝義微粒子計測器事業部 新規事業推進室。入社以来、一貫してソフトウェア開発に従事し、主に騒音計、振動計、地震計など、特注品を製造するセクションでソフト開発に注力していた。現在は新規事業に関わるソフトウェア構築を担当する。
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