RION Techinical Journal Vol.4
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まずは風間さんの業務内容から教えてもらえますか? 私の仕事は騒音計の開発です。伝統的に作られてきた機器、技術を継承しながらも新たな価値を足していく。過去から未来につながっていく製品だと思っていますし、リオンの中でも大きな事業のひとつですのでプレッシャーも大きいですね。具体的にはセンシングにあたるマイクロホン、それを伝える電気回路、デジタル処理、これを見える化するアプリケーション、大きくはこれら4つの要素について研究、開発しているのですが、4つのパワーバランス、コストバランスを検討することも業務上、大きなテーマです。優れた製品を作っても価格がものすごく上がってしまえばビジネスとしては成立しませんから。これからの時代、騒音計開発において予想される変化については? 以前、騒音計は「測る」もので、言わば定規と同じでなくなるものではないという顧客の声を聞きました。しかし、顧客の需要も変わってきています。有線であったものを無線にしてより使いやすくしたり、インターネットに接続して新しい価値を生み出したり。機器自体の金銭的コストはもちろん、作業コストも下がった方が喜ばれるでしょう。そのようなニーズに対応しながら私たちも変化していかなければならないと考えています。矢口さんの業務はどのような内容でしょうか? 私は、主に半導体デバイス開発の現場で使われる液中微粒子計の研究開発に関わっています。半導体デバイス自体がどんどん微細化の方向に進んでいるのに伴い、微粒子計もより小さな粒子を検出したいというニーズが高まっています。半導体デバイスにはデザインルールといって言わば配線の幅の規定があるのですが、これが5 nm、7 nmといったレベルなんです。一方で微粒子計は最先端の機器でも計測可能な最小の粒径が20 nmですから、半導体開発の現場に対応しきれていないと言えます。これからの時代、さらに微細な粒子を計測する必要に迫られるということになりますか? その通りです。ただし、半導体の微細化はこのまま1 nmレベルまで進むとも言われていて、微粒子計測の側としても微細化の方向を突き進んでいくだけでは限界がくるので、別の方法を模索しているんです。ひとつのアイデアとしては粒子を測定できないのなら、半導体開発の現場で利用される液体は純水や薬液ですが、この中の粒子を計測するのではなく、液体そのものの特性を管理していくという方法です。ただそのようなアイデアを具現化していくにはどうすればいいか、方向が定まっているわけではありません。液体自体を管理していく方向にシフトすれば半導体開発の現場で微粒子計測の必要がなくなる可能性も? そうですね、不純物が存在しえないような高度な液体の管理ができれば、微粒子計測のニーズが減少することはあるかもしれません。でもそれは最先端の話であって、コスト的にそこまで高度な管理が難しい領域では微粒子計測のニーズが当分、ありつづけると思ってはいます。要は需要が多様化していくということです。ところで、異なる分野の技術者同士が意見を交わす場はリオンの中で設定されているのですか? はい、社内では「横串活動」なるものを定期的に開催しています。私は10年ほど信号処理に関わってきたのですが、補聴器にしてもオージオメータにしても信号処理はどの製品にも含まれる技術です。異なる観点から互いの技術を知り、アイデアを出し合うことはとても有意義です。ただ医療機器や環境機器、微粒子計測器など、リオンの事業は専門性が高く縦割りで、それぞれが歴史を作ってきたという背景もあります。これらを横串でつなぐというのはなかなか難しいことでもあるんです。どうすれば異なる分野の技術者同士で知を共有して新たな価値を生むことができるかと考えた時、まずは「共通理解風間 亮介技術開発センター 製品開発室 音響振動計測器開発グループ。環境計量士(騒音・振動)。2011年入社以来、音響振動関連の計測器開発に関わる。ミライの技術、  FUTURE TALK 10

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