RION Techinical Journal Vol.5
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持ち掛けた。櫛山の熱意が伝わり、吉田も意を決して「それなら、やりましょう!」と快諾したという。情報収集もままならない中手探りで開発を進めた日々 さっそく櫛山は、得意先に開発前のソフトをPRしたところ、幸いにも受注に成功した。このタイミングで、いよいよRPモニタの前身となるソフトウェア開発がスタートした。しかし、実際に開発に携わったのは吉田ただ一人。開発は手探り状態のなか、まさに暗中模索で進められた。吉田は「当時は一人でコーディングしていました。最も苦労した点は、Windows関連の情報が圧倒的に少なかったこと。初期のRPモニタは、パーティクルカウンタとPCはRS-232C経由で、1対1で通信する仕様でした。Windows 3.1が発売された1993年は、情報収集は書物に頼るしかありませんでした」と語る。 それでも何とか開発に成功し、RPモニタのVer.1が晴れて販売開始となった。櫛山は顧客の反響についてこう回想する。のだ。パーティクルカウンタの通信インターフェースはRS-485が使われていたが、実はRS-485では細かい仕様はメーカーに委ねられていて、各社独自の仕様になっていたのだ。パーティクルカウンタの器種が変われば、計測のタイミングや同期などの制御も含めて通信仕様が変化する。吉田は実機合わせをしながら、試行錯誤でソフト開発を進めていった。たとえば多点ポイントを1分間で計測するなら、その間にRPモニタからそれぞれのパーティクルカウンタにコマンドを送って制御することになる。しかし、その際にどこかのポイントのデータが読み取れないという現象が起きていた。「1対多の多点システムで通信を行うとき、計測タイミングが合わなかったのです。そこでリオン側と協議して、1台あたりのサンプリング間隔を0.5秒にするなど、プロトコルを作り直しました。また、リオン独自仕様に合わせたRS-485コンバータなども開発しました」(吉田) 吉田には、開発プロセスでは苦労を厭わないという、技術者としての矜持があった。ただ、自分では対処できない外的「どの企業もWindowsの導入が始まったばかりでした。それでもRPモニタは、お客様から操作が簡単で使いやすいと好評を博し、いろいろな要望も出て、吉田にさらなる機能の追加をお願いしました」 その後、RPモニタは次々にバージョンアップしていくことになるが、大きな転機となったのは多点モニタリング用に改良されたVer.3であった。半導体製造装置が設置されたクリーンルームの清浄度管理では、各部屋に何度も作業員が行き来して清浄度測定の準備をすることに手間がかかるため、各部屋にパーティクルカウンタを設置して、PC上のRPモニタから一元的に機器をコントロールしながら、各ポイントの測定値を連続的に自動でモニタリングしたいという要望が出ていたのだ。多点モニタリングで測定データを読み飛ばす怪現象 吉田は、多点モニタリング機能の追加に挑んだ、ここでも開発は難航した。多点計測になって新たな問題が発覚した光散乱方式センサ概略図インレットノズルから吹き出す試料に光を照射する。粒子が光を通過するときの散乱光をレンズで集めてフォトダイオードで受け、電気信号に変換する。電気信号の強度が粒径、散乱光を受光した回数が粒子数となる。RPモニタ Evo10 K1701表示画面 環境モニタリングにも利用できる最新バージョン「RPモニタEvo10 K1701」。Windows 10に対応し、最大256点までリアルタイムでモニタリングできる。通信インターフェースはRS-232C、RS-485、Ethernet。そのほかフィールドバスのFLnetやCC-Linkなどでの受け渡しも可能。リアルタイムグラフ表示光遮蔽方式センサ概略図光源とフォトダイオードを対面させ、光を電気信号に変換する。粒子が通過すると、光が遮られフォトダイオードが受ける光が弱くなる。電気信号の減衰量が粒径となり、減衰した回数が粒子数となる。測定点構築表示4櫛山 一利九州リオン 営業統括部長 兼 計測器営業部部長。1989年の九州リオン入社以来、営業としてリオン製品の販売はもちろん、お客様が求める製品・システム製品の立案から製品化まで取り組んできた。現在、九州リオン営業統括部長として経営戦略に取り組んでいる。

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