当然ですが、補聴器には外部から音を取り入れる部分があり、その内部にはマイクロホンを設置します。そして、耳にかけて使用する補聴器ですからどうしても汗などの水分が入りこみ、このマイクロホンに影響してしまうことがあるのです。ですからマイクロホンを汗などの影響から防ぎたいというニーズが昔から常にあり、端的に言えば、この課題を解決するためのひとつのアイデアがここに紹介する特許の内容となります。 右図で説明すると、2a付近に外部からゴミなどが混入することを防ぐ網状の部品を取り付けるのですが、この部品は網状の部材をメッキ加工に似た製法で製作して使用する手法が一般的でした。一方、リオンではマイクロホンの内部の部品をエッチング処理によって製作することを当たり前のように採用していました。そこで、その手法を網の部分にも活かしてみてはどうだろうということで、ステンレスにエッチング処理を施す手法によって多孔部材を作り、これをゴミ除けと同時に、防水の意味も含めて採用するに至ったというわけです。右図で見ると10の部分ですね。また12の部分を接着剤で固定することで密閉性を高め、ゴミや水分を極力防ぐ構造となっています。言い過ぎかもしれませんが、補聴器の防水に関する新たな手法ということになるでしょうか。具体的には、直径2 mm程度の部材に直径30 µ程度の穴がたくさん空いているというイメージで、この部材の円周上を接着剤によって固定することで防水性を高めています。 元来、リオンは補聴器における防水性能にこだわってきた企業ですから、強みである防水性をいくらかは発展させることができたという自負はあります。でも、この特許のもととなるアイデアは私の発想という自覚はなく、リオンでは当たり前のように採用していたエッチングや接着剤による処理を、防水機能として使うという言わば、技術やアイデアのちょっとした転用です。たまたま上司から特許出願してみてはどうかと持ちかけられ、その通りにしたら特許取得に至ったという次第で私としては少し驚いた部分もありました。まさに棚からぼたもち、という心境です(笑)。ただ、特許を取得するということは、会社にとっても、技術者にとってもやはり大きな出来事で、こうした積み重ねによって製品や企業は発展していくのだとも感じています。ですからリオンの皆さんには、躊躇することなく、特許出願や意匠登録にどんどんチャレンジすることをお勧めしたいですね。THE PATENTリオンが取得した、特許登録NAVI 第一回これまで数々の特許を出願、登録し、社会に貢献してきたリオン。その発明がどのような内容で、社会にどう貢献するのかを紹介する新コーナー。第一回は、補聴器内部の防水構造に関する特許について。発明者山崎隆志出願番号特願2004-161820(P2004-161820)出願日平成16年5月31日公開日平成17年12月15日山崎 隆志医療機器事業部 医用センサ製造技術課。1994年入社。研究開発部にて補聴器のマイクロホン開発に携わり、2004年に本特許取得に至る。その後、補聴器だけでなくオージオメータのイヤホンなどの機器開発にも関わる。2018年からはマイクロホン、イヤホン、軟骨伝導振動子の生産マネジメント業務に従事。補聴器の防水性能を向上させる技術とアイデア[マイクロホンの防水構造]特許第4117269号12
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