RION Techinical Journal Vol.6
18/24

リオンのスタッフがノルソニック本社を訪れ、職場環境の視察や情報交換を実施。カーリングなどでノルソニックのスタッフと交流も深めた。リオンがノルウェーの音響計測器メーカー「Norsonic AS」を子会社化。 このたびリオンが株式を取得したNorsonic AS(ノルソニック)は、1967年に設立されたノルウェーの音響振動計測器メーカーで、主に欧州で音響計測器の開発・販売をしている企業です。社員は40名程度。そのほとんどがエンジニアで、そのうちの半分以上が開発部隊ですので基本開発企業と言っていいと思います。建築音響の製品群が得意で、欧州のシェアの50%程度を占めています。 リオンとノルソニックは30年以上のお付き合いになります。ノルソニックは高付加価値製品を得意とする会社で、ローエンドの製品については他の企業から購入していました。そんな時、リオンが得意とするローエンドの製品を供給したのがお付き合いの始まりです。以降も断続的に関係は続き、近年はリオンのブランドでノルソニックの製品を販売したり、リオンの製品をノルソニックのブランドで販売したり、といったことも行っています。ここ数年はより密な関係が持続するようになり、今回、子会社化の運びとなりました。 そのノルソニックにおいて近年、主力製品となっているのが、クラウドを利用しながら騒音の状態を遠隔で監視することができる環境モニタリング・システムです。最大の特徴は音の方向認識ができる点です。音が道路の方向から聞こえてくれば道路騒音、建築物の方向から聞こえてくれば工場騒音といったように騒音がどちらの方向から聞こえてくるのかを識別できます。これは、欧州の競合他社が開発しているモニタリング・システムにはない特徴です。リオンはクラウド・システムを持っておりませんので、ノルソニックの製品を導入して日本でも活用していこうという狙いがあります。 対して、騒音計を本業とするリオンは、国内の環境市場において業界で一番のシェアを有しています。リオンが得意とするミドル級からローエンドの騒音計、振動計は、欧州でも十分に通用する品質、機能、価格を備えています。近年、世界的に計測器の低価格化が加速するなかで、安価であることを特長とするメーカーが市場に参入しつつありますが、リオンの製品は十分な競争力を有していると言えるでしょう。 また、ノルソニックの子会社化はグローバル市場においてさらなるシナジー効果を多いに発揮できると考えています。今後、東南アジアで騒音問題がクローズアップされるのは間違いありません。一方、リオンはこれまで東南アジアで多様なビジネスを展開してきた実績があり、東南アジアの市場におけるアドバンテージがあります。ノルソニックの製品を商材として有することがビジネスを拡張させる原動力にもなり得ると思っています。 今回、両社が一体となることで、互いに欠けていた技術、商材を補い合うことができると実感しています。真の意味での世界的な環境分野における総合メーカーとして、大きく躍進できるよう、力を尽くしていきたいと考えます。 現在、すでに専任のエンジニアチームがノルソニックに入り、技術開発の協業に着手しています。一緒に活動するなかで、ノルソニックのエンジニアは皆、各々が技術者として誇りを持ち、高いレベルで業務に従事している点が大きな特徴だと私は感じています。「自分はこれをやる」という明確な目的意識とモチベーションを持ちながら、目的達成のために邁進している、そんな印象です。一方、リオンでは互いに目標を共有しながら、丁寧に段取りを踏んで開発を進めるのが社風でもあります。こうした両社の利点、得意分野を融合することができれば私たちはさらに進化することができるでしょう。私自身が考える理想の形はリオンとノルソニックのエンジニアがチームとして、ひとつ屋根の下で活動すること。そのためにはまず、日本からエンジニアを派遣し、ノルソニックの技術者にもこちらに来てもらいながら、双方の考え方や技術における差異を互いに認識し、吸収し合うことが大切です。互いにシナジーを生むためのこうした交流、融合のために、リオンとしての仕掛けや枠組みを構築していきます。国際的な活躍を望む技術者や学生の皆さんにとっても、リオンはこれからますます、魅力的な舞台となっていくでしょう。EXPRESS NEWS取材・文/伊藤 禎RION and Norsonic are teaming up.162022年7月、リオンはノルウェーの音響計測器メーカー「Norsonic AS」の全株式を取得することを発表。同社を子会社化すると発表した。この買収の狙い、効果について、リオン技術開発センター副センター長の大屋正晴が語る。大屋 正晴技術開発センター副センター長、製品・技術開発室長。騒音計や振動レベル計の開発設計、事業企画に長年携わる。令和2年には計量制度の運営等に大きく貢献したことで、リオン初の「経済産業省産業技術環境局長表彰 計量制度運営等貢献者表彰」を受賞。日本における計量制度の維持、発展に尽力する。

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る