RION Techinical Journal Vol.6
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 IHCONは、補聴器や人工内耳などによる聴覚補償に関する最新の研究成果や技術的進歩を情報交換することにより、知識を高め、研究開発の進歩を促進することを目的とした国際学会である。招待論文、投稿論文ともに、補聴器研究に関連する最新のトピックを取り上げている。 これまで2年に1度開催されていたが、新型コロナウイルスの影響により、今回は2018年ぶりの開催、19か国251件(2022年8月6日時点)の登録者数となった。リオンからは補聴器の信号処理を中心としたポスターセッションにて4件の発表を行った。 参加者には、ケンブリッジ大、デンマーク工科大、オルデンブルグ大など欧米の大学に所属する聴覚分野の権威をはじめ、世界中から研究者、オージオロジスト、技術者などが集まり、会議では最先端の研究の動向を把握できることはもちろん、国際的、学際的に所属を超えた議論ができる貴重な場であることも大きな魅力である。また、食事も発表と同一会場で行われるため交流が盛んであった。 今回の学会参加により、リオンから発表した研究に対して、多くの研究者、技術者と議論することができた。3件の発表で実際に音を聞くことができるプロトタイプを用意したこともあり、多くの人が足を止めてくれ、学会で発表しなければ決してできない具体的な議論ができたことは貴重な体験であった。 今後も定期的に本学会に参加することで、最先端の情報収集を行い、補聴器業界の動向を把握して、今後リオンが進むべき研究・開発の方向性を模索していきたい。Binaural Adaptive Feedback Cancellation Based on Prediction Error Method and Its Evaluations for Hearing Aids発表者:湯野、昼間両耳補聴器の信号のレベル差(ILD)を用いたハウリングの検知と、PEM-AFCにおけるラティスフィルタの白色化の効果を制御することにより、従来のPEM-AFCのエントレインメント抑制性能を保ちながら、ハウリング発生時に収束速度が低下する問題を解決する手法についてHybrid speech enhancement for hearing aids with deep neural networks and MMSE-LSA発表者:菅原伝統的なNRのデメリットをサポートし、かつ補聴器に実装できるような小型のDNN音声強調システムを構築。伝統的なNRとDNNによる手法で得られた2つのゲインを統合することで雑音抑制性能の向上を図った。雑音の抑制量及び音声の自然さに対して行った被験者実験での効果についてBinaural MVDR-IC Beamformer for Real Time Hearable Device発表者:藤坂、昼間、村山 好孝様(シーイヤー株式会社 代表取締役)Qualcomm® QCC5144に実装したMVDR-ICは、両耳間コヒーレンスの混ぜ具合によりインターフェアレンスの空間的印象(到来角度)が変化する。この混ぜ具合について主観および客観評価を行った。これら空間的印象とターゲット音声の明瞭性とのバランスについてInternational Hearing Aid Research Conference(IHCON 2022)の報告2022年8月、補聴器関連の世界的動向の調査と研究発表のため、リオンR&D室 補聴・計測技術開発Gの6名が「IHCON 2022」に参加した。IHCON (International Hearing Aid Research Conference)2022 年8月10日~14日Granlibakken Conference Center(アメリカ カルフォルニア州 タホシティ)https://ihcon.org/リオンの発表(ポスターセッション)IHCON 2022の会場R&D室補聴・計測技術開発G綿貫 敬介綿貫 敬介、藤坂 洋一、昼間 信彦、湯野 悠希、菅原 鈴子、佐藤 僚(R&D室 補聴・計測技術開発G)参加者Portable low-latency blind source separation system on Raspberry Pi発表者:佐藤AuxIVA手法による低遅延なブラインド音源分離の技術の小型プロトタイプを開発した。可搬性を向上させるため従来のPCベースからRaspberryPiベースにしたことにより、プロトタイプの小型化を実現した技術について19

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