RION Techinical Journal Vol.6
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技術の星名民雄さん(元技術部長)を紹介され、協力していただけることになりました。研究室で波高分析器を作ることもできたと思うのですが、そのときは科学研究費がからんでいて早めに作る必要もあり、リオンさんにお願いすることになったのです。開発期間は半年ほどでした」 5つの粒径を同時に測定できるのは重要だ。時間とともに環境は変化していく。チャンネルを切り替えながら測定すると、環境を正確に把握することができないのだ。「この装置を使ってさまざまな病院で測定を行いました。そのときの研究成果が私の博士論文の内容になっています」KC-01の価格に関しての相談を受けた 前述のとおり、KC-01は同時に5粒径の粒子を測定できた。「KC-01での同時多粒径計測は、波高分析器の技術が元になっているのではないでしょうか。粒径との整合性を取るためにセンサを微調整できるようにされたり、散乱光の強度は粒径の6乗に比例するのでそれを電圧に変換するための工夫はされたのではないかと思います」 博士は、KC-01の開発に関して直接的な関わりはなかったとしてこう続けた。「KC-01のセンサの開発には大気中の粒子計測を研究されていた中江茂博士(注2/当時、電子技術総合研究所)が深く関与されたと思います。私は研究室の助手になったころ、KC-01の販売前に営業の小林さんから、リオン独自のパーティクルカウンタを開発したので見てほしいという連絡が現在、日本空気清浄協会ではコンタミネーションコントロールの研究会を月に一度開いている。その研究会が発足する以前は、早川教授の研究室で技術交流会を月に一度開催していた。「その研究会では、空気清浄、特にクリーンルーム関係の技術交流をしており、そこにリオンさんからは星名さんがよく来られていました。私は微粒子の遠隔計測を研究するようになり、レーザーを使って散乱光を画像としてとらえる方法などを研究していました。当時、遠隔操作のパーティクルカウンタを作らないかと、リオンさんに話をしたことはあります」 空気を吸引して測定するのではなく、吸引なしでその場をその状態で測定する技術の開発について、リオンに提案したこともあった。また液中のパーティクルカウンタは是非ほしいと話したことありました」 そのときの話は、KC-01の価格に関する相談だったという。「当時のパーティクルカウンタは、海外も含め他のメーカーのものは同時に多粒径を測定することはできませんでした。そのような状況の中で、KC-01は流量の点でやや物足りない面はあったものの、同時多粒径で測定できる初めての装置でした。小林さんには、この装置は用途が広いので、あまり高くしないほうがよいという話をしましたね。また粒子や微生物のモニターのために病院関係で使うところがけっこう多いでしょうから、普通の病院で購入できるような価格帯がいいのではないかと伝えました。当時、100万円を少しでも下回ると予算が取りやすかったので、100万円以下にしてほしいという話を小林さんにした記憶があります」 こうして藤井博士が発案したクライメット社の装置とリオンによる波高分析器の組み合わせのアイデアが実現。そして、その技術を生かしたKC-01の同時多粒径計測が、米国製の微粒子計との差別化ともなり、KC-01が世の中に流通するようになる。藤井博士が確立した要素技術、中江博士のセンサ開発を軸に、リオンが社会にインパクトをもたらす微粒子計測器をリリースしたのであった。リオンとの付き合いの中で、いくつかの提案も KC-01の販売以降も、リオンとは折に触れて付き合いがあったと博士は話す。「KC-01」の表示部KC-01では表示部に明るいガス放電管(ニシキ管)を使っていた。そのため屋外でも読み取りやすいようになっていた。白色光源における側方散乱方式OPCのセンサ部分の構造KC-01でも採用されていた、側方散乱光型(白色光源)粒子センサの構造。側方散乱方式は、照射光の光軸と散乱光を受ける光軸を交差させるなどして邪魔な光が入らないようにしたもの。なおOPCは「Optical Particle Counter」の略である。注2)中江茂(1934~2007) 元 東京理科大学教授、元 電子技術総合研究所 主任研究官。大気環境科学を専門とし、気中微粒子研究の第一人者として知られる。当該分野の知見からリオンの気中微粒子計測器開発に関わった。4

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