RION Techinical Journal Vol.6
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 パーティクルカウンタはいわば、その存在そのものが当たり前のものとなっていたのだ。 汚染管理の中心はフィルタや管理手法が重要だったという。その管理手法に関する研究について日本が最も進んでいたことが、半導体産業を日本が牽引した理由の一つであろうと、博士は話した。「微粒子の制御は各国で同じように行われていました。ただクリーンルームでの汚染物質は微粒子だけではありません。1990年ごろから化学物質が問題になりましたが、日本では1980年代には化学物質の制御が重要だという論文が出るようになっていました。空気中の化学物質だけでなく、場合によっては酸素やイオン物質が影響する可能性を考慮しながらの汚染管理が重要だという考えも国内ではありました。そのあたりの考え方が、日本の半導体産業が世界でもトップに立った要因の一つだったと思います」 歩留まりが10%上がると半導体の価格競争力はまるで違ってくる。当時の日本は、汚染管理によって価格競争に勝ったというのが、大筋の見立てだ。パーティクルカウンタの今後は? リオンが国産初の気中パーティクルカウンタKC-01の販売を開始してから40数年が経過した。パーティクルカウンタは今後、どのように進化していくのだろうか。博士によれば「大気中の微粒子計測は今後、個数法に変わっていくだろう」という。個数法とは、粒径別に粒子の個数を測定する方法のことだ。「大気のモニタリングは現在、質量法(捕集があるという。「液中の微粒子濃度はその対象物への直接汚染に影響するので、開発を急がれたのではないかと思います」クリーンルームにパーティクルカウンタはなくてはならない装置 冒頭でも紹介したように、クリーンルームにおいてパーティクルカウンタは必須の技術である。「フィルタをつけた部屋の環境濃度を測定するのに最も適した装置がパーティクルカウンタですし、フィルタの欠陥であるピンホールの検査でもパーティクルカウンタを使う方が簡便にできます」クリーンルームの評価や管理など、パーティクルカウンタなしでは難しいだろうと博士は続ける。 KC-01が世に出てから数年が経ち、1980年代になると日本の半導体産業が世界を席巻するようになった。半導体の生産にはクリーンルームがなくてはならない。ではそのころ、パーティクルカウンタはどのような役割を果たしていたのだろうか。博士に聞いてみると次のような答えが返ってきた。「リオンさんが同時多粒径を計測するパーティクルカウンタを出したあと、それに対応するように各社から、同時多粒径計測のパーティクルカウンタが安価で販売されるようになりました。当時、パーティクルカウンタに関しては価格競争が激しくなり、どこでも利用できる技術になってきていました。クリーンルームでの汚染管理にパーティクルカウンタが利用しやすくなっていたのです」した粒子の質量を測定する方法)で行っていますが、将来的には粒径分布も測定したいというのが出てくると思いますので、フィルタの測定と同じく個数法に移っていくのではないでしょうか。大気中の微粒子は高濃度なのでパーティクルカウンタが苦手とする部分ではありますが、そういった測定は重要になってくると思います」 また遠隔計測に関しては、大気の観測で行われているライダーを一般環境に応用できないかと博士はいう。ライダーとは、レーザー光を発射して微粒子などからの反射光をとらえる手法のことだ。「一般環境でライダーを使おうと思うと邪魔なものがたくさんあります。それらをどうやって排除するのかに苦労するかもしれませんが、現場をそのまま測定することは非常に重要ですので、そのための手法として考えられます」1980年代初めの半導体(64K DRAM)のシェア1980年代初め、64K DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)では、日立や富士通など日本企業によるシェアが約7割を占めていた。(『FORTUNE誌』1981年12月号より )「KC-01」の回路図と本体写真左はKC-01で同時多粒径計測を可能にするための回路図、右はKC-01本体の写真だ。回路図は現在ではほぼみられなくなった、いわゆる「青焼き」で複写したものである。日立40%モトローラ20%富士通20%NEC6%TI7%他他日本 69.5%米国 30.5%5

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