i振動子についてもともとは軟骨伝導補聴器向けにリオンで独自開発した振動子。消費電力が低く、またBA型と比べて設計自由度が広いことが最大の特長だ。用途に応じて様々なサイズや加振性能に展開できる。「i」は開発に携わった岩倉行志のイニシャルに由来する。軟骨伝導補聴器向けに開発「リオンで独自開発した『i振動子』は、従来の振動子にはない特徴をもっています」 そう語るのは、リオン技術開発センターR&D室の石川愼一だ。振動子には様々なタイプがあるが、i振動子は以前からあるバランスド・アーマチュア型(BA型/電磁型駆動型)の振動子を新次元へと発展させたものだ。低消費電力で、サイズの割に大きな振動を生むことができるのが特長である。 i振動子はもともと、軟骨伝導補聴器のために開発された。「従来の振動子では電力効率がよくないため、バッテリーの持ちが悪く、大型であるため小型補聴器を実現できない。また、所望の力を出すのに大きさや重さが必要といった問題がありました。そこで快適な軟骨伝導補聴器を実現するために振動子をリオンで開発したと聞いています」と石川はいう。 軟骨伝導補聴器向けの振動子として、開発当初は圧電形の振動子を用いて試作された。「圧電形のものは駆動ICを取材・文/岡本 典明 撮影/赤羽 佑樹石川 愼一 技術開発センターR&D室 音響振動センサ開発グループ。2012年入社。音響と振動に関するトランスデューサやオージオメータで使用するイヤホンの開発のほか、振動子の設計や開発、試作などに携わってきた。14IN THE BACKYARD耳の軟骨部に振動を与えることで聞こえを補う、「軟骨伝導補聴器」。この開発においてキーテクノロジーのひとつとなったのが「i振動子」と呼ばれる振動子だ。この振動子の有する利点が社会の様々な分野で活用されるかもしれない。本企画では、その可能性について検証していく。知られざる、振動子開発の技術技術開発、最前線!加振器が支える産業と未来
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