今回のテーマ[人と場所づくり]meetsホームタウン!ぶんじ寮2020年にリオンの旧男性独身寮「むさしの寮」を改修。一人ひとりの居場所を大切にしながら、共用スペースでは、まちとゆるやかな関係を結ぶイベントなどが開かれている。クルミドコーヒー2008年に影山さんの生家を改築した多世代型シェアハウス「マージュ西国分寺」の1階カフェスペース。店内の仕掛けやメニューは、創業当時の妄想から時間を経て生まれたもの、スタッフの思いがかたちになったもので溢れている。影山知明クルミドコーヒー 店主1973年国分寺市生まれ。東京大学法学部卒業。外資系経営コンサルティング会社を経て、ベンチャーキャピタルを共同創業。2008年株式会社フェスティナレンテを設立。同年に開店した「クルミドコーヒー」を拠点に、地域通貨、出版業ほか、様々な事業に取り組んでいる。リオンのスタッフが、国分寺で活躍する旬な人や場所を訪れ、国分寺の魅力を再発見するコーナー。今回訪問したのは、店内がワクワク感で溢れるカフェ「クルミドコーヒー」。オーナーの影山知明さんは、人と人のつながりから創出した数多くのプロジェクトを仕掛ける国分寺のキーマン。リオンの社員寮をシェアハウスにつくり変えた中心人物でもある。 リオンから歩いて15分ほどの西国分寺駅前にある「クルミドコーヒー」。オーナーの影山さんは「人と人が混じり合うまちの交差点のような場所をつくりたい」と、創業時の思いを話す。カフェを始める前、経営コンサルティングや投資ファンドの業務に携わってきた彼は、「利潤最大化へと人を駆り立てる今の資本主義は人を幸せにしない」と、経済のあり方への疑問を感じていたという。「通常のビジネスの動機が利益の最大化である『テイク』である一方、私たちの動機は『ギブ』。カフェでは、つくり手の存在が感じられる手間ひまをかけたものを提供しています。いい時間や特別な時間を過ごして欲しいという私たちの気持ちを、お客さんは敏感に感じ取ってくれているんだと思います」 「クルミドコーヒー」には、日々100人近い多様なお客さんが訪れる。そこにはお客さん同士の思いがけない出会いもあり、放っておいても様々な出来事が起こるようだ。「お店を舞台に様々な事業が花開きました。そうしたことが暮らしを共にする場であればいっそう起こり得るのではないかと、住環境をつくることへの関心を持っていたんです。」 そんな思いが、まちの中でのもう一つのユニークな場づくりにつながる。それがリオンの男性独身寮の再利用だった。オーナーが代わり、この建物が賃貸に出されたのは2020年のこと。影山さんは、数人のメンバーと寮の下見に出向き、秘密基地のような魅力を感じて契約を即決した。この場所が、現在、「まちの寮(シェアハウス)」として再出発した「ぶんじ寮」である。現在21名が同居。家族や単身者、年齢も立場もさまざまだ。管理人は居ても、オフィシャルなルールはなく、すべて住人同士の話し合いで決めるらしい。お金から自由になるため、家賃は3万円ほどに抑え、生活に必要なものは住人同士で持ち寄り、協力しながら自分たちならではの暮らしをつくっている。ここでは、一人ひとりの言葉に耳を傾け、お互いの意見をすり合わせる関係性がつくられているのだ。 昨今の問題としては、電気代の高騰があった。光熱費を抑えるため、2ヶ月間限定でお風呂にお湯を張らないというルールを皆で実践してみたのだが、住人のひとり、あみさんがどうしても湯船につかりたいということで、話し合いの末に彼女が「お風呂大臣」になることで落ち着いた。「皆であみさんが決めた“お風呂の日”に合わせて入ろうと決めたんです。それは“一切お風呂に入らない”でもなく“自由にお風呂に入る”でもない。個別の事情に対し一定の配慮をしながらも、白でもない黒でもない間を探し出したんです」 住人会議に同席した影山さんは、住人がお互いに納得できる解決策を、ユーモアを交えて決めたことに感心したという。 「ぶんじ寮」では、地域の野菜を使った「ぶんじ食堂」や朝喫茶「間(はざま)」のほか、地域とつながるユニークなプロジェクトが続々と生まれ、風通しのいい関係性を育む「まちの縁側」のような機能を担っている。「面白いことが起こる場は、その場所だからこそ生まれる関係性が重要です。私はこの『クルミドコーヒー』や『ぶんじ寮』に、人を受け止める苗床や土のようなイメージを持っていて、そこに関わる人が種として芽を出し、大きな木に育っていくような場づくりをしています」「ぶんじ寮」では、カフェを開くことや壁に絵を描くこと、焚火を行うなど自由きままにやりたいことに取り組める環境が整っていると感じました。影山さんは「国分寺には、失敗しても大概のことは許される大らかさがあり、新しいことに取り組む土壌が醸成されている」と言います。 当社が失敗を恐れずに新しいことへ挑戦し、世界初・日本初の製品を生み出すことができた要因のひとつに国分寺ならではの風土があることを再認識しました。(RTJスタッフ 岡部 雄紀)写真提供:ぶんじ寮17OUR FAVORITE TOWN, KOKUBUNJI リオンのスタッフがナビゲート 取材後記リオンの寮がシェアハウスに? 木のように人が育ち、ことが生まれる場所づくりリオン国分寺
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