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e=+ixリオンスタッフのこだわりコラムNo. 007数学の響き、広がる世界オイラーの公式xは任意の複素数、e はネイピアの数(e=2.718...)、i は虚数単位、cosは余弦関数、sinは正弦関数。オイラーの公式は指数関数と三角関数、複素数の世界での結びつきを表しています。リオンを支える、理科や数学好きなスタッフたち。 この連載では、理数系のスタッフがそれぞれの「理数愛」 を語る。第7回は「オイラーの公式」について。 私は、マイクロホンを計測器に繋ぐ増幅器(プリアンプ)の開発などを手がけています。子供の頃から算数や数学に興味があり、思考を巡らせて解を求める、その過程が楽しかったのです。長じて大学では情報数理学を専攻しましたが、そこで出会ったのが「もっとも素晴らしい公式」といわれている“オイラーの公式”でした。オイラーの公式は下の通りです。※         ※ オイラーの公式が「もっとも素晴らしい公式」といわれている理由は、この公式が単純で理解しやすく、様々な分野で応用できるためです。例えば、私が取り扱っている音や振動の波形は、単純な正弦波であれば三角関数(sinもしくはcos)で表すことができます。複雑な波形であっても、重ね合わせの原理により単純な正弦波の総和となります。このままだと複雑な波形を分析する際には三角関数の計算が必要になりますが、オイラーの公式を使うことにより指数関数で計算することが可能になります。指数には、累乗の積を指数の和や差で表すことができる、微積分が簡単になるという特徴があります。つまり、オイラーの公式を使うことで計算をシンプルにすることができるのです。 実は、学生時代はオイラーの公式自体にはそこまで興味を持ちませんでした。大学での学習時に面白さを感じたのは、一般化していくことであったからです。ここでいう一般化とは、最終的に示したい目標に対して、まずは問題や定理が狭い範囲で成立することを示し、そこからより広い範囲での成立を示す手法です。 例えば、目標が実数で成立することを考えるならば、まずは実数より狭い範囲の自然数で考えます。自然数は正の整数である1,2,3,・・・だけだから考えやすい。そこから、整数・有理数と広げていき、最終的に実数で成立することを示します。オイラーの公式を証明する際には、一般化における手法の一つである数学的帰納法が使用されます。当時は導かれた結論よりも、導く過程に面白さを感じていました。また、導き出した数式が世の中でどのように使われているか触※         ※れる機会が学生時代に無かったことも、興味を持たなかった理由の一つです。※         ※ しかし、リオンに入社し、オイラーの公式を業務で使う場面に遭遇し、数学の実用性を認識することになりました。私は、音や振動などの物理量を計測して信号に変えるセンサを開発しています。センサの入出力を確認する方法の一つとして高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)があります。FFTとは、時間領域の波形データを周波数領域のスペクトルデータに変換するアルゴリズムです。スペクトルデータに変換するので、縦軸を信号レベル、横軸を周波数とした簡単なグラフで表現できるようになります。結果として、視覚的に波形を確認することができます。FFTのアルゴリズムを理解する際に、オイラーの公式が利用されていることを発見しました。オイラーの公式はFFTの他に、流行りの機械学習にも使われています。オイラーの公式がもつ実用的な価値は、学生時代よりもリオンに入社してから実感しています。世間では、「数学なんて役に立つのか?」と話題になることがありますが、リオンで数学がものづくりに役立っている場面に出会い、数学の実用性を実感したときは感慨深いものがありました。取材/濱口 英樹 文/濵中香子・山川雄生佐々木 正哉技術開発センターR&D室 音響・振動センサ開発グループ。大学時代は数学・情報数理学科で数学とプログラミングを学び、リオンに入社。マイクロホンを計測器に繋ぐ増幅器(プリアンプ)の開発などを手がけている。20波を紐解く公式EPILOGUE SCIENCE, SCIENCE! 理数好きなもので。cosxi sinx

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