「KS-20F」開発秘話 微粒子計測器に用いられる光散乱方式とは、試料に光を照射し、試料に含まれる粒子が発する散乱光を捉え、散乱光の強さから粒子の大きさを、散乱光の発生回数から粒子の数を検出する方式である。 粒径が光の波長より十分に小さい範囲において、散乱光の強度は粒径の6乗に比例する。これまでも「KS-19F」という品質要求を厳しいものにしていった。そのような業界のニーズに呼応して、リオンでは2009年以降から、より小さな粒子の計測が可能な製品を順次発売。直近では、20 nmの粒子検出が可能な最新機種「KS-20F」を発売した。製品で30 nmまでの粒子計測を実現していたが、「KS-20F」で20 nmを実現するためには、乗り越えなければならない壁があった。測定可能な粒子径が30 nmから20 nmの3分の2になるということは、粒子から発せられる散乱光強度は12分の1となってしまい、「KS-20F」では、より微小な信号の検出技術が必要となったのだ。 そのような状況の中、「KS-20F」のプロジェクトリーダーの齊藤光秋は次のように語る。「2019年、これまでリオンの各事業領域(補聴器・医用検査機器、音響・振動計測器、微粒子計測器)で個別に行っていた製品開発組織と、先端技術開発のR&Dセンターを統合した開発センターが発足しました。そこで各々が持つ特長ある技術が共有され、「KS-20F」で課題となっていた微弱な信号を検出する技術に応用した結果、20 nmの粒子検出の実現に大いに貢献できました」 また、「KS-20F」では、内部に採用するレーザ光源や集光レンズ、光検出器、電気回路など、全ての設計を見直し最適化を図った。リオンの「KS-20F」は、高機能化が進む半導体製造工程に対応するための精巧な設計と卓越した性能を備えている。それは齊藤の言葉を借りれば、「KS-20F」はリオンが長年にわたり培ってきた技術の集大成であり、技術進化と業界ニーズの双方を満たすために、リオンの技術者たちが絶え間なく努力してきた証でもある。 リオンの探求は終わらない。「KS-20F」は微細化の波に乗りつつ、未来の半導体プロセスに対応する技術革新のための基盤を提供する。産業の新たなニーズに対応するため、更なるイノベーションを生み出すスタート地点となるのだ。光散乱方式センサ概略図光の照射部分を粒子が通過すると散乱光を発し、これを受光素子で受け、電気信号に変換。電気信号の大きさが粒径となって散乱光を受光した回数が粒子数として計測される仕組み。試料の流路部には、合成石英やサファイアで作られた粒子検出セル(フローセル)が用いられている。KS-20Fを用いた測定システム例液中パーティクルセンサのバッチ測定用「シリンジサンプラ KZ-31W」や、パーティクルセンサの動作制御、測定データの表示用「コントローラ KE-40B1」などと接続し、液中の粒子測定を行う。齊藤 光秋微粒子計測器事業部 開発部。2008年に入社し、微粒子計測器開発、気中・液中微粒子計測器の設計に従事した後、2016年頃から要素技術開発を含む先端技術開発に関わる。2020年から「KS-20F」プロジェクトリーダーを務める。近年のリオン製液中微粒子計測器粒子粒子15フォトダイオードフォトダイオード半導体レーザ半導体レーザフォトアンプフォトアンプ発売時期製品型式2009年KS-18F2011年2014年KS-19F2022年KS-20F最小可測粒径0.05 µm(50 nm)0.04 µm(40 nm)0.03 µm(30 nm)0.02 µm(20 nm)KS-18FX照明レンズ系照明レンズ系散乱光集光用レンズ系散乱光集光用レンズ系電圧信号電圧信号フローセルフローセルコントローラ KE-40B1KS-20FシリンジサンプラKZ-31W
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