RION-JPN-vol8
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 リオンが初めて騒音計を発売したのは1955年。実に70年近くも騒音計を開発し続けているリオンにとって、騒音ばく露計の開発はそう難しいものではないと考えられていた。しかし、騒音計と騒音ばく露計のユーザーが異なることが、想像以上の課題となった。騒音計を使用するのは、ほとんどの場合、音や騒音の専門家である。それに対して騒音ばく露計のユーザーは、作業者の健康管理を担う企業の衛生管理者や安全管理者がメイン、つまり音に対しての専門的な知識を持っていない場合が多いのだ。そのような人でも使いやすく活用しやすい製品とはいかなるものか。開発はリサーチからスタートした。「鉄道会社やオートバイの製造メーカー、製鉄所などの労働環境を巡り、現場の方々に話を聞いたり、測定の専門業者や産業衛生を研究している北九州の産業医科大学でヒアリングを重ねたりした結果、騒音ばく露計に求められるのは、軽く、小さく、省電力で、落下しないということでした。現場作業者は、測定のために騒音ばく露計を一日中身に付けなくてはならないのですが、激しい動きもある現場で、とにかく作業の邪魔にならないということが重要だったんです。そこで、思い切って表示画面をなくすことで、大幅な軽量化、小型化、省エネ化を実現しました。しかしながら、騒音の数値を確認するための表示画面は、騒音計の基本的な仕様だったので、“騒音計としておかしい”という疑問の声は最後まで根強くありました」と語るのは、中市健志だ。また、騒音ばく露計が落下したり、何かにぶつかったりした際に生じる衝撃を、マイクロホンが大きな音と感知して測定してしまうことも課題の1つだった。これを解決したのは、「騒音ばく露計開発プロジェクト」のメンバー山下大輔である。「何度も実験を繰り返し、落下などの衝撃かどうかを判断できる閾値を割り出し、内蔵センサによって衝撃音と騒音を判別できるようにしました」 もちろん落下しないようにする工夫も怠らない。ワニクリップを取り付け、機器をしっかりホールド。激しい動きをする作業でも機器が外れないようになり、将来的には肩だけでなくヘルメットにも取り付けられるよう開発が進められている。 装着時の快適さを追求する一方、さらなる軽量化•小型化を実現するため、機能は徹底的にシンプル化され、利便性に特化していった。電源のON/OFFや測定のSTART/STOPはボタンひとつで行える。測定データは「NB-14」本体内部に自動で保存され、コンピュータ用のデータ管理ソフトウェア「AS-05 Viewer」を使えば、閲覧だけでなく、ガイドライン改訂の記載例に沿った報告書も作成できる。測定と報告がワンストップに行えることで、各事業所が余計な手間をかけずに騒音障害防止対策に取り組めるようにしたのだ。 ゴールはまだ先に  エンジニアたちが、騒音計とは異なる騒音ばく露計のハードウエア開発に試行錯誤していた頃、「騒音性難聴予防プロジェクト」の中市健志と武田葵は、労働衛生という分野に新規参入するリオンの認知度の向上と、「NB-14」の有用性を周知させるために奮闘していた。具体的には、金属加工作業場やクリーンルームなど、多くの騒音作業現場と作業環境測定機関で試作段階の「NB-14」を用いた調査をヒアリングゾーン半径30cm横向きに取り付ける場合測定データ収集縦向きに取り付ける場合報告書の作成4ステップ1測定回収ステップ2ステップ3リスク対策報告書を提出保護具を選定して装着を指示対策効果の確認ステップ4装着効果の確認とフィードバック中市 健志技術開発センターR&D室 新市場開発グループ。1995年入社。国産初の騒音ばく露計「NB-14」開発のキーマン。「騒音性難聴予防プロジェクト」のリーダーとして、労働衛生業界におけるリオンの認知度を向上させ、「NB-14」の有用性を周知するために貢献した。産業医産業保健師衛生管理者測定を指示環境測定士測定者作業者騒音ばく露計の取り付け例騒音ばく露を正しく測定するためには、「NB-14」をヒアリングゾーン(耳から半径30cmのゾーンを指す)である、肩や首、頭部などに着用する。たとえば肩の場合、横向きと縦向き2パターンの着用方法があり、ワニクリップを使用してしっかり固定する。現場での作業左は、厚生労働省の「騒音障害防止のためのガイドライン改訂」に沿った現場作業のイメージ。作業者の聴覚を守るために、事業所と医療機関が「NB-14」で測定された個人騒音ばく露のデータを収集、報告書の提出を行う。産業医、産業保健師、衛生管理者は報告書をもとに耳せんなどの聴覚の保護具を現場に提供する流れとなっている。

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