RION-JPN-vol10
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10大澤 正俊技術開発センターR&D室 補聴・計測技術開発グループ。2012年入社。補聴器の組み込みソフトウェアや信号処理の研究開発を担当。環境分析機能、ノイズリダクション機能の開発などに携わり、現在はリオネット初AI搭載モデルである、リオネット2シリーズを手掛けている。山田 新技術開発センター 製品・技術開発室 補聴器開発グループ。2013年入社。以来、補聴器開発を担当。電気設計が主なタスクだが、製品開発のマネジメントなど、開発全般に携わってきた。介護補聴器やリオネットシリーズなどの開発を経て、現在は、リオネット2シリーズの開発を担っている。【リオネットロゼ】(2009年)2009年発売。オープンプラットフォームDSPを初めて採用し、リオンならではの補聴器づくりに舵を切った初期モデルである。音のコントラストを調整し、メリハリをつけることで聞き取りやすくするSSS(Sound Spectrum Shaping)ほか、マルチチャンネルOPC、ノイズリダクションなどを装備し、騒音や不快音を抑えながら、聞きたい音が聞きやすい仕様になっている。【リオネットマジェス】(2012年)「新たなる聞こえの感動へ」というキャッチフレーズのもと、2012年にリリースされたモデル。当時、リオネット補聴器の技術を結集した最高級グレードの位置づけで開発がなされた。6つの「快適・聞き上手」な機能として、強力なハウリングキャンセラー「AFBC+」、風の強い日でも快適な「風雑音低減」、突発音を抑える「パルスノイズサプレッサー」、音の広がりを演出する「ブライトサウンド」、テレビやケータイの音を中継して補聴器に飛ばすことができる「プレミアムリモコンⅡ」、騒音低減に威力を発揮する「FFNR+」など、画期的な機能が多数搭載された。【リオネットプレシア】(2013年)2013年に発売され、その優れたソフトウェアは以降、多くの製品に流用された。リオンを代表する補聴器の1つとなった人気モデル。2009年に発売されたリオネットロゼをプロトタイプとしているので、機能はリオネットロゼと似ているが、全方位的にブラッシュアップされている。中でも、ハウリングキャンセラー機能はハウリングマージンを約15 dBから約25 dBへと引き上げており、聴力レベルが大きい人向けの補聴器にも対応できるようになった。DSPってなに?「Digital Signal Processor」の略語。半導体チップで、コンピュータにおけるCPUのような存在。補聴器における役割としては、マイクロホンが拾った音を、A/Dコンバータがデジタル信号に変換したあと、様々な信号処理を行っている。1990年代は、画一的な補聴器用DSPを使用していたが、リオネットロゼでオープンプラットフォームのDSPを採用したことにより、リオンのオリジナリティを出しやすくなった。オープンプラットフォームのDSP採用が起点 リオン製補聴器の歴史において、1990年代をアナログからデジタルへの変換期とするならば、2000年から2015年にかけての15年間は、デジタル補聴器の成長期と呼ぶことができるだろう。2000年以降は、技術レベルの底上げと開発ノウハウを積み上げながら、機能性に富む補聴器の開発に邁進した時代だった。いわば充実期とも呼べるこの期間にリリースされた、リオネットロゼ、リオネットプレシア、リオネットプレシアⅡに見られる進歩は、「自然な聞こえ」をユーザーにもたらすための着実な歩みであったとも言える。 2009年に発売されたリオネットロゼは、プログラミングの自由度が高いオープンプラットフォームDSPを初めて採用し、ユーザーが求める様々な機能を搭載した意欲作であった。とりわけ革新的だったのが、それまでの補聴器が対応できていなかった「周波数選択性の劣化」にアプローチしたことである。 そもそも、聞き取りが困難になる原因は、大きく下記の4つに分けられる。❶ 最小可聴値の上昇(小さい音が聞こえづらくなる)❷ リクルートメント現象(音が響いてうるさく聞こえやすくなる)❸ 周波数選択性の劣化(騒音下で聞き取りづらくなる)❹ 時間分解能の劣化(早口が聞こえにくくなる) これまでの補聴器は上記❶と❷に対応していたが、❸と❹には未対応であった。リオネットロゼでは、フィッティングソフトで周波数選択性の劣化度合いを測定、割り出された推奨値をもとに音のコントラストを調整し、すっきりと聞きやすくする独自開発のSSS(Sound Spectrum Shaping)を搭載し、雑音があるときも聞きたい音を聞きやすく処理することに成功した。そして、リオネットロゼのバージョンアップ版であるリオネットロゼIIの後継モデルとして満を持して登場したのが、2013年に発売されたリオネットプレシアである。「ロゼは、世界の補聴器メーカーに追いつけ追い越せと作り上げたモデルでした。この時、吸い上げたユーザーからのフィードバックを全面的に改善することで生まれたのがプレシアで、1つの完成に近づいたモデルになりました」と話すのは補聴器のソフトウェアや信号処理を研究開発している大澤である。 補聴器の電気設計をはじめ、製品開発をハードウェアの側面から支えている山田も続けた。

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