5生物粒子計数器 Microbial Particle Counter XL-M4B液体中に浮遊している生物粒子を測定する一般細菌用生物粒子計数器。医薬品工場などにおける注射用水、精製水等の生物粒子を計測する。第18局改正 日本薬局方参考情報「微生物迅速試験法」に準拠し、製薬用水管理業務の軽減に最適。リアルタイム連続モニタリングにより迅速なアクションが可能。深紫外線照射技術により飢餓状態の(コロニー形成能力が減少した)菌でも検出が可能。またオンライン、オフライン測定もでき、生産ラインの不具合の早期発見・原因調査も可能。試料温湿度範囲は90℃まで対応。FDAの21 CFR Part11対応、データインテグリティ対応。またリオンがバリデーション(IQ、OQ、PQ)業務をサポートし、各実施記録書を作成。佐々木 次雄リオン株式会社顧問。元医薬品医療機器総合機構(PMDA)品質管理部GMPエキスパート。東京大学農学博士。国立予防衛生研究所、国立感染症研究所での勤務を経て、現職はGMP Technical Advisor、大阪大学大学院工学研究科招聘教授など。 製薬企業が薬を製造するにあたって、きれいな水は欠かせない。元医薬品医療機器総合機構(PMDA)品質管理部GMPエキスパートにして、リオン株式会社で顧問を務める佐々木次雄氏は次のように語る。「中でも注射用水の基準は厳しく、日本薬局方によって注射用水中の菌の数は100 mL中10個以下と定められています。ちなみに水道水の場合は1 mL中100個以下が基準となっています」 この数字は、100 mLに換算すれば1万個。つまり注射用水は水道水に比べ、1000倍以上菌数が少なくなくてはならないということになる。 検体中に、ある菌の有無や数を調べる方法を発見したのは、ドイツの医師で“近代細菌学の父”と称されるロベルト・コッホだ。彼がその基礎を作り上げた、シャーレの中で菌を増やして目視で数を確認する「培養法」は、その発明以来、現在に至るまで130年以上にわたり世界中で採用され続けてきた。 一方で、製薬の世界では長らく、液体中の菌や微生物を即時に自動計測できる装置が求められていた。「薬事規制から言えば、微生物モニタリングは培地でコロニーを作っていたが、これには時間がかかります。したがって、水の汚染が発見されたときには、医薬品の製造は先に進んでおり、製造プロセスを戻すことはできません。リアルタイムで見られれば、それが一番良いのです」 佐々木氏が語るように、培養法ではその結果が出るまでに5日以上がかかる。彼は「無菌試験法のように微生物の非存在を証明するのとは違い、注射用水の場合、微生物数が10 cfu/100 mL以下にあることをトレンド解析で把握することが重要であり、リアルタイムでの迅速測定法は製薬用水システムの悪化傾向を早期に検出するには非常に良い方法である。QCスタッフの労力軽減にも大いに役立つものです」と述べている。 2013年、リオンは新規事業として生物粒子計数器を開発した。これは液体中の微生物を連続かつリアルタイムに自動計測する、世界初の製品だった。液体にレーザーを当てることで細菌が持つ酵素の自家蛍光を検出し、微生物の数をカウントする仕組みである。電子、医薬品、食品製造など、産業分野のクリーンルームや製造工程の清浄度管理に貢献する様々な微粒子計測器を製造してきた、リオンならではの製品と言えよう。開発当初から佐々木氏は、本製品が今後の製薬業界では必須になると、普及に向けて企業内セミナー等で折に触れ紹介をしていた。 しかしこの装置が、すぐに製薬会社で使われることはなかった。長い歴史を持つ製薬業界は体質的に慎重で、“石橋を叩いても渡らない“とまで言われる世界だ。新たな技術をすぐに受け入れる土壌はなかった。また、導入がなかなか進まない理由はそれだけではない。「菌に対しての感度の高さを証明するだけでなく、検査の過程を記録したり、データの改ざんがされていないことを証明したりする必要があるなど、非常に大きなハードルがあったんです」 そう語るのは、微粒子計測器事業部 開発部の水上だ。水上はこの新たな製品を手に製薬学会にも足繫く通い、どうしたら受け入れられるのかを模索していた。製薬学会の中にはこうした新しいものを取り入れようという革新的なグループもいたが、製薬企業の多くは懐疑的な目を向けていた。 培養法にも劣らない精度の高さを求め、水上は計数器の性能をさらに向上させようと奮闘を続けた。ある時、デモ器を使っていた製薬企業の一つから「色々な菌を測ってみたけれど、この菌はほとんど測れなかった」という問い合わせがあった。調べてみるとそれは通常のバクテリアよりも非常に小さいもので、製薬企業がフィルターの性能試験に使用する、チェック用の菌だった。水上が調べてみても、培養法に比べ、自社の計数器では菌の検出が2~3%程度にとどまることが分かった。 そこで付け加えたのが、深紫外線照射装置だ。もともとは製薬企業で殺菌用として使われてきたものだが、その紫外線を菌に当てると、増殖しなくなるだけでなく、リボフラビン(細胞内の自家蛍光物質)が酸化することにより、発する蛍光の強度が上がることが分かった。そのため、それまで検出できなかった菌もはっきりと検出することができるようになった。現在も使われている、コッホが130年前に確立した「培養法」リオンが開発した、世界初の「生物粒子計数器」を製薬業界に
元のページ ../index.html#7