RION-JPN-vol11
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8 2023年1月、リオンに新しいキャリングケースが誕生した。縦300mm、横356mm、厚み100mm、インダストリアルな印象のブルーグレーのプラスチック製ケース。持ち運びを前提としたリオン製品のうち、騒音計の「NL-53シリーズ」、振動レベル計の「VM-57」、気中パーティクルカウンタの「KC-52A」をパッケージしており、これからも増える予定だ。2021年10月の開発スタート かくして一気にバージョンアップしたリオンのキャリングケースだが、完成までの道のりは容易ではなかった。特に大きな成形品であることから、プラスチックの扱いには苦労した。「材料となるPP(ポリプロピレン)にはさまざまな種類があります。最初は補聴器などで使用実績のあるPPを使うことから始めてみましたが、落下試験で簡単から2年余りの間に起きたトライアンドエラーを一番よく知るのは、研究開発室の阪上大輔である。「これまでリオンでは、製品ごとにキャリングケースが用意されていました。例えば、20年ほど前から使われてきた精密騒音計『NA-28』の合皮製キャリングケースは一つひとつ手作業で作られており、コストもかさみますし、必要な数量を生産することが難しいという状況に割れてしまったんです。そこからキャリングケースに必要な耐衝撃性の高い材料をいろいろと試していきました。キャリングケースに耐衝撃性が必要なことは当然ですが、お客様のさまざまな使用に耐えうる強度を持たせるために、試行錯誤を繰り返しました」 成形する際の高い収縮率も予想外だった。成形時にABS樹脂に対して2倍に直面していました」 話に上がった製品以外にも、気中パーティクルカウンタ「KC-52」や音圧レベル計測アンプ「NA-42」、汎用振動計「VM-83」用の合皮製キャリングケースは、高価なうえに時代を感じさせるデザインだ。振動レベル計「VM-55」や「VM-56」は既成のプラスチックケースを採用しているが、輸入品のため時間と輸送コストがかかってしまう。騒音計「NL-52シリーズ」では、他の製品で使用していたブロー成形の金型を流用したオリジナルケースを製作しているが、内側の形状も金型で製作するため、各機種以上収縮するPPは、冷えると反りが出てしまい、表側と裏側がぴったりと合わなくなるという不具合が頻繁に発生したのだ。そこで、阪上は工場に通い、材料や成形温度、金型の温度や冷却時間など、さまざまな組み合わせを試してベストな条件を見つけ出した。 改良は最終段階まで続いた。例えば、実際のものに触ってみたところ、取手の端のスライドロックが、開閉する際にすべりやすいことに気づいた。そこで、デザインになじむ形状で指掛かりのための突起を追加することで、すべりにくくなるキャリングケースの課題はコストや部材調達の安定性とデザイン新型キャリングケースに相応しいプラスチックの扱いに苦戦

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