RION-JPN-vol11
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20岩橋 清勝代表取締役社長。1979年入社。騒音、振動計測に使用されるデジタル技術を用いた計測器、分析器の開発に携わる。音響振動の技術部門長、環境機器事業部長、技術開発センター長などを歴任し、2022年4月に代表取締役社長に就任。(現在は新装版が刊行)書籍は「知」や「発想」の源泉。リオンを率いる岩橋清勝社長はどのような本を読んでいるのでしょう。本連載では、リオンの岩橋社長が自らの本棚からとっておきの一冊をご紹介していきます。 社会人になってしばらくした頃、ふと、坂本龍馬に興味を持ち、その人物像に迫るため関連書物を探しました。そしてこの「竜馬がゆく」に出会い、もう夢中になってあっという間に全巻読破したのです。それほど私に大きな影響をもたらしてくれた小説です。 誰もが知る坂本龍馬が主人公で、激動の時代を生き、暗殺されるまでの一生を描いたこの小説。なにより龍馬の言動に私は今でも魅了されています。ひとことで言えば「自由」。なにごともゼロベースで物事を考え始め、自由に考えを巡らせ、最適なゴールに向かって、行動力を発揮していく龍馬。型にはまらず、先入観を持たず、どん欲に新しい考えを採り入れることで彼は時代を切り開いていきます。一人の男として、とても憧れるふるまいがこの小説には活写されているのです。 翻って、私自身を見つめ直してみると、龍馬ほどの自由な発想、行動で日々、生きているかといえばそうではありません。会社を経営している以上、周囲にリスクは必ず潜んでおり、まずは従業員のみなさん、関係各社のみなさんをこうしたリスクから守る、決して路頭に迷わせるようなことがあってはならない、と考えるからです。ただ、保守的な姿勢だけを貫いていても、会社が発展するのは難しくなってしまいます。ゆえに私は心のどこかで、自由で柔軟な発想による新たな試みをいつも模索するようにしています。そんなことを考える時、いつも龍馬の言動が脳裏に浮かび、私の背中を押してくれるのです。 また、この小説から浮かび上がってくる龍馬の交渉力にも、大きな影響を受けました。私自身はどちらかといえば人の情にうったえることで相手を説得していくタイプ。一方、龍馬は物事を論理的に捉えた上で、相手が「イエス」と言いたくなるような交渉術をしばしば発揮します。たとえば龍馬は、極めて仲の悪い薩摩と長州に同盟を結ばせてしまいます。長州の米、薩摩の鉄砲を互いに交換しあうという方法で、同盟への道筋をつくっていったのです。こうした合理的思考、客観的な事象の見方による、交渉術は私に大きな気づきを与えてくれました。 あまりに影響を受けたこともあって、もしタイムマシンがあれば、私は幕末の時代に行ってみたいと思うようになりました。もし幕末に行ったら龍馬の付き人志願などして、さらなる学びを得たいものです。CEO's Bookshelf第二回「竜馬がゆく」司馬遼太郎・著(文春文庫)社長の本棚。

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