3 2024年1月、リオンは補聴器と医用検査機器のブランドを統合し、新たに「リオネット」として事業を展開することとなった。「その聞こえのためにすべてを。」をスローガンに据え、実施されたこのリブランディング・プロジェクト。その背景にあった意図、ブランド統合によってユーザーにもたらされるメリットなどについて、本プロジェクトを牽引した医療機器事業部の太田昌孝に話を聞いていく。「目的は、リブランディングによってリオンの事業展開をダイナミックに変革することでした。それによって、リオンと社会との関係性が大きく変わり、私たちが『聞こえ』に関する多様な課題を克服できる企業として、ますます成長していけると確信しています」 プロジェクトの中身を端的に言えば、補聴器の開発・製造・販売で広く知られるリオネットブランドと、聴力検査など医療の現場で使用される医用検査機器のリオンブランド、この2つのブランドの「統合」ということになる。創業80年を数えるリオンが長年、有してきた2つのブランドを統合するためには、太田をはじめとしたすべての関係者が多大なエネルギーを注ぐ必要もあった。なぜ、このように大きなプロジェクトを推進したのか。太田はまず、リオン創業時からの時代背景について、こう話した。「創業当初、マイクロホンやピックアップの製造に取り組んでいた当社は、やがて補聴器の開発・製造・販売を手掛けるようになっていきました。そして補聴器の1号機をリリースした約4年後には、使用者に適合した補聴器の調整を行うための正確な聴力検査に貢献すべく、医療の現場で使用するオージオメータの1号機を完成させることになります。こうして補聴器と医用検査機器の開発が並行するなか、補聴器には『リオネット』という愛称が付され、医用検査機器のリオンとは異なるブランドとして市場で認知度を高めていきます」 補聴器は使用者に向けた開発・販売体制が敷かれ、医用検査機器は医療の現場に向けた開発・販売体制が整っていく。それぞれ、向き合う現場や顧客の性質が異なるため、関係するスタッフのマインドや行動様式は次第に異なってきたのである。 こうした状況に対し違和感を覚えたのが太田だった。「補聴器のリオネットブランドと医用検査機器のリオンブランドが並立していることで、特段、大きな問題が生じているわけではありませんでした。しかし、未来を見据えていくと、2つのブランドを統合したほうが当社にとっても、お客様にとっても大きなメリットがあるだろうと。そこで、どのようなあり方が理想的なのかを考えるところから始め、道筋がおおよそ見えてきた段階で、このリブランディングをプロジェクトとしてきちんと遂行していくべきだと確信するようになりました。最終的にはたくさんのスタッフが関わるプロジェクトになりましたが、私に加えて数名のコアメンバーと共にプロジェクトの旗振りを行っていくことになったのです」 通常業務を抱えながらも、なぜ、大きなエネルギーを要するこのプロジェクトを推進していく決心をしたのか。その理由について太田はこう話す。「リオンという企業としてみれば、補聴器メーカーと医用検査機器メーカーの両面を有しています。しかし、これら2つのブランドは開発面、販売面において理想的なシナジーを生み出せていない状況でした。リオネット補聴器ユーザーにはリオンが聴力検査機器の開発をしているという事実があまり知られておらず、逆に、医療の現場ではリオネット補聴器とリオンが同じ会社であることが思いのほか知られていなかったという現実もあったのです。どちらのブランドも『聞こえ』に関する事業を推進しています。そこで、もしこれら2つのブランドを1つに統合できれば、認知度や信頼性も高まっていくだろうと。どちらも製品を開発しているわけですが、このモノづくりは手段の一つでしかありません。そもそも当社のミッションは、一人ひとりの『聞こえ』を改善することで、豊かな暮らしの実現に貢献していくことです。太田 昌孝執行役員 医療機器事業部長。2001年入社。営業部で補聴器の営業に携わった後、東京営業所の立ち上げメンバーとして医用検査機器の営業を経験。その後、企画課、事業戦略室室長などを経て、2024年、医療機器事業部長に就任。趣味はアカペラ、ロールプレイングゲーム。広く「聞こえ」の価値を届ける強力なブランドとして補聴器医用検査機器
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