・ 難聴の発見から聞こえの提供までの 一気通貫のソリューション・ 補聴器と医用検査機器のシナジー効果“解決力”・ 一人ひとりの聞こえに寄り添うやさしさ・ ユーザー目線の製品開発や 使い続けてもらうためのサポート“やさしさ” そう考えると、モノづくりだけでは不十分で、悩みや不安を抱えている方々に対して広く、『聞こえ』の価値を届けるブランドでなければならないと確信するようになったのです」 幅広いソリューションを提供すべく誕生した新生「リオネット」ブランド リブランディングプロジェクトを推進しようと決めた背景に、もう一つの理由があったと太田は話す。時代とともに、市場における競合他社との関係性が大きく変化したこともこのプロジェクトをさらに加速させる原動力になっていったという。「リオンが補聴器の開発・製造・販売を始めた頃、補聴器といえば、ほとんどがリオネットでした。それだけ寡占状態だったわけです。ところが2000年代以降、海外を含む多くの補聴器ブランドが日本市場でしのぎを削るようになりました。さらには、多様なブランドの情報を一般ユーザーが自主的に集められるようになり、選択の幅が広がったことで、競争が激化するようになったのです。こうなると、リオネットとしては他ブランドとの差別化を明確に打ち出さなければいけません。ひるがえって、リオンのこれまでの歩みを見ていくと補聴器だけでなく、広く『聞こえ』にまつわる事業を展開してきたわけです。難聴の発見から聞こえの提供までを一気通貫で行うブランドとして、一人ひとりの「聞こえ」に向き合っていく4ならば、補聴器と医用検査機器のシナジーをしっかりと醸成し、『聞こえ』に関わる多様な悩みや不安を解決できるという事実をしっかりアピールしていくことが理にかなっていると考えました」 太田がこう考えるようになったプロセスの中で、「リオネットサークル」構想の存在も強く意識された。この構想は、リオンのデジタルプラットフォームを介して、補聴器に関するユーザー、耳鼻科、販売店の三者をつなぎ、相互に必要な情報を共有しあいながら、補聴器の価値向上や「聞こえ」を通じたQOLの改善を実現していくというもの。三者とのチャネルを個別に展開するだけでなく、有機的に融合させることで、社会にこれまで以上のメリットをもたらすべく企図された構想だった。「例を挙げれば、リオンならではの正確な聴力検査の結果をもとに、その方に最適かつ精密な補聴器の調整が実現できるかもしれません。あるいは、難聴に悩む方に対し、手術や投薬によって治療するか、あるいは補聴器をお勧めするかといった、医師の診療判断を医用検査機器でサポートすることで、幅広い選択肢を提示できるのです。補聴器ユーザーから得られたデータを医療従事者と共有することで、画期的な新製品の開発につながっていくことだって考えられるでしょう。つまり2つのブランドを統合することで、リオネットが提供できるソリューションの幅が格段に広がり、これまでにないサービスや価値を広く社会に還元できるようになるのです」 2022年に考えをまとめ、リブランディングの必要性を経営層に訴えることから進んでいったこのプロジェクト。具体的にはまず、市場や顧客の実態調査を入念に行い、その結果からブランド統合のメリット、ブランド非統合のデメリットなどを客観視することで社内のコンセンサスを得ていった。「なにしろ70年余りも続いてきた補聴器のカテゴリーと、ほぼ別働隊として長年、機能してきた医用検査機器のカテゴリーですから、それぞれ独自の思想やスキームが定着していました。それぞれが結果も出してきたので、縦割り的な組織になって、ある種の壁ができてしまうのも仕方がないですよね。ブランド統合に反対する社内の声も少なくありませんでした。しかし今、リブランディングに動き出さなければ時代に先んじた『聞こえ』にまつわる多様な事業運営が難しくなります。関わる社員のマインドを変えていくことや、リブランディングしながら顧客に利するシナジーを生むことは簡単ではありませんが、地道に取り組んでいくことで周囲の理解を得なブランドロゴ新ブランドロゴは、難聴の発見から解決まで一気通貫の価値を提供するブランドのあるべき姿を表し、ピンク色は寄り添う"やさしさ"を、青色は聞こえに対する課題の"解決力"を表現している。Rのデザインは、聴力検査機器の検査音や補聴器の音が伝わる様子を表している。これからも続いていくブランディングの道程
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