マイクロホン開発の歴史は創業の時代にまで遡る森川 昌登研究開発センター 研究開発室 音響・振動センサ研究開発グループ。音響振動計測器関連のマイクロホン開発や音響校正器、比較カプラ開発などに従事。現在は校正器全般の設計開発に携わっている。コイル式からコンデンサ式へのシフト(1インチマイクロホン)可聴域を網羅(1/2インチマイクロホン)88指示騒音計「NA-09」「UC-53」入社。以来、マイクロホン開発やプリアンている。指示騒音計「NA-07」鈴木 綾子研究開発センター 研究開発室 音響・振動センサ研究開発グループ。2011年プ開発に取り組む。現在は、主に高温環境用マイクロホンの開発などに携わっ リオン株式会社の親にあたる小林理学研究所が1940年に掲げた6つの事業計画のひとつに、「ロッシェル塩の圧電気に関する研究」がある。ロッシェル塩とは酒石酸カリウムナトリウムのことで、音波をすばやく捉える特性がある。第2次世界大戦中にはドイツがいち早くこれを採用し、音波防御レーダーを開発していた。1944年、小林理学研究所の研究成果を製品化すべく設立された小林理研製作所(リオンの前身)は、ロッシェル塩結晶の圧電振動子(クリスタル振動子)の研究開発に専念。やがて1946年に誕生したマイクロホン第一号が「M-101」である。その後開発された「M-201」は防湿性能の高さが認められ、進駐軍向けとして日本電気から注文を受けるように。これが現在、リオン製品群の柱のひとつとなっている、計測用マイクロホンの始まりだ。 音を電気信号に変換するためのツールであるマイクロホン。リオンが手掛けるマイクロホンの用途は、大きく二つに分けられる。一つ目は環境騒音測定のため、騒音計の先端に取り付けて使用するもの。二つ目は工業用品の開発や研究用途として産業向けに使われるというものだ。 当初のマイクロホンは永久磁石を用いて磁気の力で音を検知する「コイル式」であったが、この方式は感度が低いことと、高い音(高周波音)を拾いにくいという弱点があった。そこで1967年頃から、向かい合う電極間の容量変化で音を検知する「コンデンサ式」のマイクロホンが登場し、精密騒音計「NA-51」や、指示騒音計「NA-09」などに搭載されるようになっていった。現在も、カラオケなどの音楽用マイクロホンにはコイル式が多く使われているが、計測用マイクロホンは一般的にコンデンサ式が採用されている。 マイクロホンの開発は当初、1インチ径から始められた。1インチとは25.4mmで、一般的にマイクロホンの大きさは先端の直径で表す。人が耳で聞くことのできる音の範囲“可聴領域”は20 Hzから20 kHzとされるが、「1インチマイクロホン」では構造上、10 kHz程度までしか測定することができなかった。これでは騒音計の用途としては十分とは言えず、人間の可聴領域を騒音計1台でカバーすべく誕生したのが、直径を半分にした「1/2インチマイクロホン」だった。20 kHzまでの高周波音を網羅できることから、今日ではこのサイズがスタンダードとなってリオンの各騒音計に採用されている。 その後登場したのは、人の耳には聞こえない、さらに高い音まで拾うことができるマイクロホンとなる「1/4インチマイクロホン」だ。これにより、100 kHzの超音波領域まで測定が可能となった。1964年に登場した指示騒音計「NA-07」に搭載されていたのが、コイル式の1インチマイクロホン。コイル式は、振動や湿度に強く比較的丈夫で安価だったが、感度が低く高い周波数帯域を測定しにくい特性を持っていた。その周波数帯域の弱点を補うためにコンデンサ式にシフト、その第一号となったのが1969年発売の指示騒音計「NA-09」である。1インチでは測定できなかった人間の可聴領域を1台で網羅するために開発された。直径を1/2インチにすることにより測定周波数範囲が20 kHzまで広がり、現在の計測用マイクロホンのスタンダードサイズとなった。
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