マイクの直径が1/4インチと小さく、人の耳には聞こえない100 kHzの超音波領域の音まで拾うことができる。音圧レベルで150 dBを超えるような大音圧の測定にも適している。測定周波数範囲1 Hz~20 kHzの低周波音測定機能付き精密騒音計「NL-63」にも搭載。背気室と外部との間に形成される通気路を狭くかつ長くすることによって音響インピーダンスを高め、カットオフ周波数を超低周波領域まで伸ばしている。低い音圧レベルをより簡易なシステムで計測する目的で設計されたローノイズマイクロホン。自己雑音が極力低くなるよう設計されている。120℃までの高温環境下の測定に対応。一般的な1/2インチマイクロホンと比べ、高分子フィルムの高温耐久性を強化している。コンデンサ式マイクロホンは振動膜と背極で構成され、音を電気信号に変換する。プリアンプにてインピーダンス変換を行い、騒音計などの機器で信号を処理する。マイクロホンとプリアンプは通常、一体となって使用される。マイクロホンが使われる具体的な場面とは高周波域用(1/4インチマイクロホン)低周波域用(1/2インチマイクロホン)低音圧レベル測定用(1インチマイクロホン)高温環境用(1/2インチマイクロホン)マイクロホンとプリアンプの関係99「UC-29」「UC-54」「UC-59L」「UC-35P」プリアンプ「NH-35」付属「UC-59HX」プリアンプ「NH-22H」付属マイクロホンプリアンプ このようにマイクロホンは形状が小さく進化してきたが、必ずしも小さい方が高性能というわけではない。1インチは高周波音を苦手とする一方で、低周波音を得意としており、また音を検知する感度は振動膜の面積に比例するため、小さな音も測ることができる。1/2インチはこうした点で劣り、1/4インチとなればなおさらだ。ただしサイズが小さくなることで振動膜をより強固に張ることができ、より高い音圧レベルまで測定することができるというメリットもある。つまりマイクロホンの形状の大小においては、一方を尊重すればもう一方が成り立たない状態、トレードオフが生まれるということになる。 低周波音測定用マイクロホンの使用例として挙げられるのは、近年問題視されている風力発電や、ヒートポンプ給湯器が発する騒音への対応だ。さらに火山や津波、雪崩といった自然現象から超低周波音が発生することも報告されており、超音速飛行機が音速を超えたときに数Hzを主成分とする衝撃波(ソニックブーム)が発生することも知られている。こうした低周波および超低周波音に関する実態調査では、低周波音測定用マイクロホンが欠かせない。 一方で人の耳には聞こえない高周波音、超音波領域の測定需要も増えている。近年は無線化技術が広く進み、無線でのデータ通信や無線給電、さらには空間上に画像を映し出すといった技術が登場し始めている中で、こうした機器が意図せず超音波領域の音を発生させ、人体へ悪影響をおよぼす可能性が指摘されている。低周波と同じように、超音波が人に与える影響は昔から研究されてはいるが、ばく露量および周波数と、人体への影響との関係性は未だ不明瞭だ。規制をするにせよまずは正しく測定する必要があり、超音波領域を測定できる1/4インチマイクロホンは活躍の幅を広げていくことだろう。 マイクロホンの信頼性を担保する重要な指標となるのは、経時的な安定性だ。いつどのような環境で測定しても、変わらず安定した数値を計測できることが大切である。極寒の地で測定するケースがある一方で、人が立ち入ることのできないような高温下での測定も行われる。一般環境だけでなくこれらの環境下でも安定した計測を実現できるよう、高温環境用マイクロホンなども開発している。 音圧によって振動する振動膜、これに数十ミクロンの距離を置いて平行に対向する固定電極(背極)、振動膜を支える筐体部などの部品の組み合わせでコンデンサ式マイクロホンは作られている。人体で言えば鼓膜にあたる振動膜はチタン合金でできているが、この部分のみが進化のカギを握っているというわけではない。部品ごとの温度傾斜の組み合わせでマイクロホンの温度特性が決まるなど、理想的な組み合わせの模索こそが、マイクロホン開発の歴史と言えよう。
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