14だったために、各社が増産を行いました。ゆえに今度は、供給過多の状況が生まれてしまいました。このような半導体業界の特徴は“シリコンサイクル”と呼ばれ、実は作りすぎ、足りなさすぎというサイクルが繰り返されているのです。しかしよく見てみると、山と谷を繰り返しながらも、供給と需要は上昇を続けていく。「今年は半導体業界が低迷」という話が出たところで、その谷は前回の山のピークよりも上。波はありながらも、右肩上がりで成長し続けているということです。ですから半導体は成長産業であり、限界は今のところ見えません。これが半導体産業の大きな特徴です。世界に出遅れた日本。挽回の機運は高まっている。 世界の半導体統計のグラフを見ると右肩上がり、一方、日本はその成長が真っ平らです。やはり、かつての「読み違い」が国内の半導体産業にとっては大きかったのです。半導体を軽視し、結果として日本は世界的に後れをとってしまいました。もちろん政府レベルでの日米半導体戦争の影響もありますが、それよりも「半導体なんかもうダメだからやめましょう」という空気が、この30年間にわたって浸透してしまったわけです。つい5~6年前まで、一流大学の学生の間では「半導体は斜陽産業だから行かない方がいい」という話が普通に交わされていました。現実を見てみると、いまや半導体が世界の産業、経済を支えており、半導体業界は強大な力を有しています。このような状況になることを、日本が読みきれなかったのは、とても残念なことだと私は思っています。 しかしここ2~3年で「やはり、半導体を作らなければ」と理解する関係者が増え、国内に製造拠点を作る動きが見られるようになりました。そのひとつが、2022年に設立されたラピダスという新会社です。ソニー、トヨタ自動車、デンソー、キオクシア、NTT、NEC、ソフトバンク、三菱UFJ銀行など国内大手企業8社が出資し、日本政府も700億円の開発費を拠出しています。このような動きは日本にとって喜ばしいことだと私は考えます。取材・文/小林 良介注目の業界動向を、識者が語る新企画 リオンが注目する業界や、リオンが自社製品ですでに貢献している業界について、その動向を識者に聞いていく新企画。 今回は、半導体業界の現在と未来について、ジャーナリストの津田建二氏に取材。 微粒子計測器によって半導体製造現場のクリーンな環境維持に貢献するリオンと半導体業界との、 今後の理想的な関係性などについても意見を求めた。半導体関連の市場は、間違いなく今後も拡大していく 半導体の原料はシリコンですが、シリコンの元はなんだと思いますか? 実は砂(ケイ石)なんです。世界中どこにでもあり、どの国にも偏っていない民主的な材料なんですね。そのような観点で半導体製造のプロセスを見ていくと、結局、誰がやろうと思ってもすぐできる技術だと言えるでしょう。かつて、半導体といえばコンピュータと電子機器くらいにしか使われていませんでしたが、今ではスマートフォンはもちろん、私たちの生活のあらゆる場面で使われています。ボタン一つでお風呂の湯が沸くのも、トイレの便座が適温で制御されているのも半導体のおかげ。私が最近驚いたのは、洋服を買うときにカゴの中に商品を入れたまま一瞬でその中身を読み取るシステムです。値札の中に半導体チップが入ってるからできることですよね。このように半導体はその利用範囲をどんどん拡張し、半導体の需要は、まだまだこれから伸びていくと考えられます。 2022年までの時期は、半導体不足津田 建二さん国際技術ジャーナリスト。東京工業大学理学部応用物理学科卒業後、日本電気入社。半導体デバイスの開発等に従事した後、日経BP社に入社。「日経エレクトロニクス」「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」の記者、副編集長、国際部長などを歴任。30数年間、半導体産業をフォローしてきた経験を生かし、書籍や講演会などで半導体産業に様々な提案を行う。半導体業界の現在と未来半導体業界の現在と未来UTLOOKING!
元のページ ../index.html#16