RION-JPN-vol13
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パルスの高さ(電圧)0.5 µm0.2 µm この数に、山崎教授は「予想通り」という感想を抱いた。サンプル水は同時に、山崎教授の手によって「蛍光顕微鏡」でも調べられていたからだ。「私が顕微鏡で見た数と同じくらいだったことから、計数器の精度は極めて高いと感じました」 そもそも、私たちの身近な飲料水にも細菌のような微生物が混入していることがある。微生物がいるだけですぐさま人体に害があるわけではなく、その種類や数は国によって一定の基準が決められ管理されている。大切なことは、微生物がどれくらいいるのかを正確に把握することが、安全な飲料水管理における要であり、生物粒子計数器の精度の高さは、その安全管理に有効であることを証明したのだ。から宇宙ステーション内でこれを行うことは現実的ではないが、蛍光顕微鏡での計測もまた難しいと山崎教授は言う。「宇宙飛行士は優秀な方々ですが、私たちのようなライフサイエンスのスペシャリストばかりではありません」 そもそも、プレパラートの上に水滴を落として見るという行為自体、微小重力環境のISSや重力が地球の1/6の月面においては非常に困難だ。では、リオンの計測器を宇宙ステーション内に持ち込むことはできないのだろうか。水上の答えはこうだ。「最初に“リオンの装置は宇宙でも使えるんですか”と聞かれた際には“使えるはずです”と答えました」 計測器は水滴を落とすのではなく、チューブを使い圧力をかけて水を内部に送り込んで測る。またこうした繊細な装置は通常、衝撃に弱いが、リオンの計数器は持ち歩いて使うことを想定しているため、振動や衝撃にも耐えられる構造となっているのだ。しかし、宇宙ステーション内では使えない大きな理由がひとつあった。水銀ランプだ。 生物粒子計数器では正確な数値を出すため、水銀ランプを使って深紫外線と呼ばれる光を当てて計測している。これが側の担当となったのは、微粒子計測器事業部 開発部の水上敬だ。「私は大学で電子工学を学びましたが、同じ大学で機械制御工学科にいった友人たちはみんな“ガンダムを作りたい”と言っていました。もちろん私も同様に、宇宙への憧れがありました」 ガンダム世代の水上は、宇宙関連の仕事を手掛けることに心底、ワクワクしたという。また、この生物粒子計数器を研究開発した関本一真も、同様にこのプロジェクトに加わることとなった。 2021年、「きぼう」日本実験棟の滞在が3度目となるベテラン宇宙飛行士の野口聡一氏が、検査のための水を採取。バッグに入ったサンプル水はドラゴン補給船で地上に運ばれ、フロリダ半島沖に着水。NASAからJAXAに送られた後、東京・国分寺にあるリオン本社で早速、生物粒子計数器による測定が開始され、実際の飲料水中の生物粒子数が数値として示された。ISSで採水されたサンプルは、ドラゴン補給船によって、地上へ運ばれた。ドラゴン補給船は、フロリダ半島沖に着水。サンプルはNASAからJAXAへ運ばれた。その後サンプルは、東京・国分寺のリオン本社に到着。測定が実施された。生物粒子計数器生物粒子計数器は、液中に含まれる生物粒子を自動かつリアルタイムで測定する装置。深紫外線を照射することにより、生物粒子を判定するほか、溶解性有機物(炭素)を分解し、溶媒の蛍光(バックグラウンドノイズ)を大幅に低減させ、生物粒子を取りこぼすことなく測定できる仕組みとなっている。ISSからリオンへ。飲料水サンプルの経路(2021年1月、2022年1月、2023年1月の3回実施)調査はまず、宇宙飛行士による、ISSの飲料水ディスペンサーのサンプル採水から始まる。宇宙ステーション内に水銀ランプは持ち込み不可 培養法では時間がかかりすぎることガンダム世代が胸躍らせた「宇宙関連」の仕事 この研究プロジェクトに対し、リオン4生物粒子計数技術の詳細はこちら© JAXA/NASA水上 敬微粒子計測器事業部 開発部。1997年入社。Micro Monitorプロジェクトでは、リオン側のリーダーを務めるほか、生物粒子計数器の開発メンバーとして様々なプロジェクトを推進。製薬業界の学会においても精力的に活動している。© NASA TV筑波宇宙センター生物粒子と判定蛍光信号散乱光信号時間© JAXA蛍光有無判定閾値非生物粒子と判定

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