RION-JPN-vol13
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5 生物粒子計数器を中核に据えた飲料水のオンボードモニタリングシステム飲料水は、深紫外線照射装置を経て、高感度の生物粒子計数器へと送られる。フローコントローラにより水の流量を制御、PCで測定結果をモニタリングするというシステム構成。生物粒子の検出原理(センサ部)生物粒子計数器の微生物検出原理は、微生物が持つ代謝活性物質(リボフラビン)の自家蛍光を検出するというもの。紫色レーザー光を試料に照射した際、通過した粒子が発する散乱光を散乱光検出素子で受け、電気信号に変換。信号の大きさから粒径を、受光した回数から粒子数を算出。その中で、蛍光検出素子で自家蛍光を捉えた粒子が生物粒子と判定される。遠い将来をも見据えて両者の関係はこれからも 2021年、2022年、2023年の計3回、最大の特徴であるのだが、高出力の深紫外線照射に必須の水銀ランプは、安全面の配慮から宇宙ステーション内では使用ができない決まりとなっているのだ。これが今後の課題ということになるわけだが、水上は次のように語る。「水銀ランプ以外にLEDなど、違う方法で紫外線を照射させるアイデアは出てきていますが、まだ今使っているようなものと同レベルの強度までは到達していません。しかし、元々こうした検出装置ができたのも、レーザーなどの技術革新があったからです。これからも、水銀ランプの代わりになる部品はどんどん出てくるはずですから、将来的には実現可能だと思っています」測定は実施された。その結果は、いずれも生物粒子計数技術による微生物管理法の優位性を示唆するものであった。微生物数を連続的にモニターすることができれば、その変化をリアルタイムに検出でき、その傾向を分析すれば、飲料水中の微生物のアウトブレイクに対し、早期警報を発することもできるはずだ。「今回の検証で、ISSの飲料水に生物粒子計数技術を適用できることを示せたことは大きな成果です。一方、今後、宇宙でリアルタイムモニタリングを実現するために解決すべき点が明確になりました」と山崎教授。「ペットボトルでも水道水でも、飲料水は誰かがどこかで検査しているわけです。宇宙でも地球と一緒で、誰かが“この水は安全です”と担保しているから安心して水が飲めるんですよね」 今後、リオンがJAXAと共同で研究しようとしているのは、将来の有人宇宙活動において飲料水ディスペンサーの水の安全性を確保するために微生物をオンボードモニタリングする方法だ。将来は、生物粒子計数技術を宇宙利用に向けて最適化し、従来の培養法に頼らない、新たな飲料水管理技術として応用されることを期待したい。 このプロジェクトの核心、生物粒子計数器を開発した関本は語った。「生物粒子計数器のコンセプトは自動で水を測るということですが、寄与しようとしているのは、社会的な課題です。これからは水問題が一層、顕在化し、地球上の淡水を世界中が取り合うことになるだろうという予測もあります。日本は水が潤沢にありますが、そうではない国もたくさんある中、下水を再利用するとか、海水を淡水化するといった方法も検討されています。将来、水の完全再利用が必然性を帯びてくるかもしれません。現時点で、地球上ではそこまで切迫感はありませんが、すでに宇宙では水の管理に対する需要があります。今から、この分野の研究に携わる意義は確実にあると思います」 宇宙ステーション内の次は月軌道ステーション「ゲートウェイ」。その次は、月面基地が建設され、遠くない未来、人類は火星にも基地を作ることだろう。そこにはリオンの生物粒子計数技術が、必要不可欠な技術として活用されているのかもしれない。紫色レーザー(405 nm)生物粒子非生物粒子散乱光検出素子蛍光検出素子フローセル散乱光蛍光関本 一真微粒子計測器事業部 開発部 先端技術開発課。2007年入社。旧R&Dセンター 所属時から生物粒子計数器の研究開発に関わる。生物粒子から放出される自家蛍光を利用した計数技術におけるリオンきってのエキスパート。

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