RION-JPN-vol14
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8● 使用用途、成形材料等の製品仕様を基に大まかな金型仕様を検討。 成形委託先、外部金型製作先を購買課と決定する。● 型割:パーティングライン、アンダーカット処理、ゲート(樹脂の入口)、成形収縮率などを考慮し、流動解析を行いながら、部品の実現性を設計担当者と詰めていく。● 設計:成形性、加工性、金型寿命・メンテナンス性、温調(冷却)などを考慮し、射出● 主にマシニングセンタを用いて微細加工、他にも研削盤や放電加工を駆使して高精度に加工する。金型は1品なので加工ミスが無いよう慎重な段取りが必要。● 最後は手仕上げで磨きや金型合わせを行う。● 成形トライを行い、成形不良・寸法を確認して金型の調整を繰り返す。● 樹脂温度、金型温度、射出速度/圧力などを調整して、各部品の量産条件を決める。かんごう初期検討金型設計金型加工射出成形金型製作の現場本社にある機械デザイン研究開発グループの現場。多くの加工機 械や工具が並ぶ 中、チームリーダーの村上が、まるで芸術品のようで複雑な金型の構造を説明した。射出成形金型と金型の構造射出成形とはプラスチック製品の成形において最も一般的な工法。加熱して溶融させた樹脂を、コア(オス型)とキャビティ(メス型)によって作られた金 型内の空 洞 へ注 入、その 後、冷却固化して製品の部品を作る。射出成形機での作業これは、上部から樹脂をセットし、金型へ樹脂を流し込む射出成形 機。写真は、小学校見学で配布しているプラスチックモデル、リオネット補聴器の公式キャラクター「ピクシーくん」の金型。成形用金型の設計を進める。はこれに気付き、不快に感じるという。補聴器はメガネと同様に朝起きてから寝るまで付けたままの道具であり、長時間使っていても違和感のない装用感が重要だ。つまり、段差がまったくないほどの精度が必要ということになる。 また耳の後ろに触れる本体は、汗などの水分が入らないよう高い防水性が求められる。通常、防水性の高い製品を製 造する場 合、部 品と部 品 の 間 にOリングと呼ばれるゴムパッキンを噛ませることが多いが、補聴器でこれを採用すると製品のサイズが大きくなり、そのままユーザーの負担につながってしまう。そこで部品同士の精度を高め、わずかなすき間もなくぴったりと篏る必要がある。 つまり機械デザイン研究開発グループの仕事には、金型を作り、そこに樹脂を流し込んで出来上がった製品を組み合わせた時に、0.02mm ほどの誤差も許さない精度の高い加工を行う能力が求められる。 補聴器の機構設計担当者は、樹脂部品の金型の作りやすさまでは考慮しない場合もある。そのため、村田は機構設計担当者と何度も意見をぶつけ合いながら調整すると言う。「 3D CAD の中で補聴器を設計することができても、それが実際のモノとして作れるか、補聴器部品の金型を作れるか、さらには補聴器を量産できるかどうかは別の問題です。ですから提案された合させ図面を我々が見て“この部分の形状をこうしてくれたら金型が作れる” などと伝えます。機構設計側は製品として譲れない部分もあると思いますが、物理的に作れないのでは意味がありませんから。何度もやり取りをして、よい落としどころを見つけることも我々の仕事です」 よりよい製品を作るため、ひとつの製品に対して何往復も機構設計担当者側とのやりとりを行い、金型を作り始めてから完成するまでは、2カ月半から3カ月かかるという。 部品を作る際は、金型の空洞になっている部分に約 200℃の樹脂が流し込まれる。これを「射出成形」と呼ぶ。その後、50℃程度まで冷やし樹脂が固まったところで取り出される。ここで難しいのが、樹脂は冷えた際に体積が収縮することだ。冷やす時間が 5 秒長くなっただけで、形状が変わってしまうという。金型をデザインするときには、この収縮率まで加味する必要があるのだ。部品の大きさや形、さらには流し込む樹脂の種類によっても収縮率や収縮する方向性が異なり、シミュレーション通りにはなかなか わずかな樹脂の収縮も考慮して精密な金型を考案金型製作の工程成形部品の品質は金型の良し悪しで決まる。

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