マシニングセンタでの作業金型製作における形状加工の中心となるのが、このマシニングセンタでの作業。マシニングセンタ主軸先端の工具を用いて、金型を加工していく。ただし製品表面に使用する場合は、カッターパスを手作業で地道に磨いていく。放電加工機での作業マシニングセンタでは加工できない、細い穴や溝などを電極を用いて溶かしながら加工する放電加工。また、削るだけでなく、製品のシボ(細かい凹凸模様)などもこの放電加工で施すこともある。研削盤での作業金型の表面を1/1,000mm の厚さで研磨する場合はこの研削盤を使う。ベテランになると、金型に書かれたマーカーのインクの厚み分だけを消すような研磨作業を行うことができる。表面の仕上げ作業マシニングセンタで加工した金型の表面を磨き上げる作業。6ページ左下の写真のように、ヘラを用いた手作業で地 道に仕上げていく。顕微鏡を使い、わずかな磨き残しも見逃さない。いかないと村田は言う。「樹脂の収縮率や収縮の方向は材料特性や成形条件により異なってくるので、このような影響を考慮して金型を設計、製作する必要があるんです」 ここまで言及した通り、金型の設計では精度が求められるのはもちろんだが、コストの問題も重視しなければならない。ある形状の部品を作るために、金型の駒(金型を構成する独立した部品)を2個で組み合わせるのか、3個で組み合わせるのか、あるいは4個必要なのか。これを「型割り」といい、ここに金型製作を担当する3人それぞれの考え方やセンスが現れる。駒が少ない方がコスト面では有利だと思えるが、場合によっては、駒を3個で作るよりも4個にした方がかえってコストを抑えられることもある。ゆえに、型割りは一筋縄ではいかないわけだ。「例えば村田が型割りをした際、ほかの2 人が見ると“もっとここはこうした方がいいんじゃないか ”といった話にはなりますし、その逆もあります」(尾澤) 何年経験を積めば一人前か、という数字を表すのは難しいと村田は言う。かつて金型製作の世界には、この道何十年という職人が数多くいた。しかし現在は、個々の能力の高さや多様性よりも、部署全体としての均質で高精度な技術が求められている。「 3 人で設計から加工までの全ての工程を見るため、ひとりひとりがあらゆる工程に精通していなければ短期間で型を作ることは不可能です。なので、知識や経験など、多面的な技術による均質化が求められていると感じます」(村田) 金型を作るにあたって考えるべき点は、まだある。リオンの製品は息が長く、また、金型は数十年前のものが今も稼働していることが少なくない。そのため、メンテナンスのしやすさ、汚れや壊れにくさといった長期的な使用への配慮も重要だ。「製作時にコストを抑えた結果、5 年しか持たない金型より、多少高額でも 30年間耐えられる構造である方が良いという事です」(尾澤) 最後に尾澤は、金型を作る部署ならではの喜びについてこう話した。「製品が出来上がってくる最初の瞬間に立ち会えることに充実を感じます。金型自体を作った段階で、ある程度の達成感はあるのですが、実際に樹脂を流し込んで問題なく部品が仕上がり製品が出来上がった時に、初めて金型としての役割を果たしたことになります。何度、金型を作っても面白いと感じています」コストや耐久性をも考慮した金型づくり9
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