RION-JPN-vol14
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OUR FAVORITE TOWN, KOKUBUNJI リオンのスタッフがナビゲート 取材後記今 回 の テ ーマ街 を 表 現 す る 庁 舎19用事があるとき以外はなかなか訪れる機会の少ない市役所。ただ、今回お話を伺い、行政機能にとどまらず地域交流の場としての役割も果たす、新しいかたちの庁舎であると感じました。庁舎内の各フロアに設置された案内板やカウンター、椅子などには木材が多く使用されており、温もりのある空間が印象的でした。さらに、新庁舎ベンチづくりワークショップなど、地域を巻き込んだ取り組みを通じて、市民の皆さんとともに親しまれる空間づくりが進められていることが伝わってきました。(リオンテクニカルジャーナルスタッフ 岡部 雄紀)東京都の重心に位置する「国分寺」、リオンが生まれ育ったこの地は、いったいどんな場所なのか、街の旬な人や場所をリオン社員が訪れ、その魅力をお伝えするコーナー。今回は、リオンから徒歩 8 分、2025 年 1 月から現在の場所に移転し業務を開始した、国分寺市の新庁舎を訪問。高い耐震性と最新の防災設備を誇り、行政の窓口というだけでなく、今や市民の憩いの場となっている。この魅力的な建物は、どのようにして誕生したのだろうか。メインエントランスロビーには、七重塔模型やペンシルロケットなど、国分寺ならではの歴史を感じることができる。(写真提供:国分寺市役所)国分寺市 職員のお二人左は、庄司久弥さん(国分寺市政策部公共施設マネジメント課) 右は、髙木恵美さん(国分寺市まちづくり部まちづくり推進課)。20年近く続いた国分寺市新庁舎建設事業のなかで、先人から最後のバトンを受け継ぎ、具体的な新庁舎建設を担当された。随所にある憩いのスペースエントランスからエスカレータで登った 2階の地域情報コーナーには、国分寺の名産品や文化資料、アートなどが展示されている。このほか、多目的スペース、図書館、最上階のテラスなど、憩いの場がたくさん。国分寺市役所市役所の外装新庁舎の外装には、市内の小中学生が参加したワークショップによって生まれた色が用いられている。建物の西(写真右)側と東(写真左)側は、隣接する周辺環境に合わせて色が異なる。能。非常用発電は国の基準を大きく上回る7日間、雨水再生によるトイレ使用も最長7日間維持できる設計だ。「この場所を選んだ理由のひとつが、防災面への配慮です」と話すのは、公共施設マネジメント課の庄司久弥さん。新庁舎は広域避難場所である都立武蔵国分寺公園が隣にあり、消防署や国分寺市の医師会といった災害時の関連施設にも近接している。   さらに、広い公園に隣接していることで、多くのメリットも生まれた。「市役所に入る敷居は低くなったように思います。1階は今、放課後の子どもたちの居場所になっていますし、3 階のリフレッシュスペースも開放しているので地域のサークルの打ち合わせ場所や高校生の勉強の場など、いろいろ自由に使っていただいています」(髙木さん) そんな親しみやすい建物となったのは「木漏れ日グリーン」というカラーコンセプトの効果もあるだろう。庁舎を彩る外装は、募集し 2025 年1月1日、国分寺市役所は新庁舎に移転した。旧庁舎が建てられた1963 年以来、実に62 年振りのことだ。耐震性能の課題から旧庁舎を閉鎖・解体することとなったのは2008 年のこと。以来、約17年間にわたって行政機能は市内の各場所に分散していたが、この度、遂に一元化されたこととなる。「市民との協働を大切にしている国分寺市では、新庁舎のコンセプトを決めるために、何度も市民懇談会を開きました」と話すのは、まちづくり推進課の髙木恵美さん。2019 年には市民の意見を反映し、「暮らしと命の支えになる」「市政が身近になる」「国分寺の心を育む」の3つを基本理念に「頼りがいのある」「無駄のない」「利用しやすい」など6つの基本方針が定められた。 新庁舎の建設で特に重視されたのが、防災対策だ。新庁舎は東日本大震災や熊本地震を教訓に、免震構造を採用。電力は 2 系統から供給され、片方が被災しても継続使用が可た国分寺市の未来を担う小中学生とともに、色彩の専門家によるワークショップ形式で決めたもの。周辺の環境に馴染むよう、自然の色をサンプリングしてできたカラーパレットを用いた。 開庁から5カ月、新庁舎に訪れる市民からは「(いい庁舎ができて)よかったね」と、よく声を掛けられるという。エントランスで楽しそうに撮影する光景や、甲子園のパブリックビューイングで地元高校を熱心に応援する姿からは、地域への愛着が伝わってくる。 庄司さんが「ちょうどいい街」と表現する国分寺。市の調査によれば、人口は増加傾向であり、また市民アンケートでは約 9 割の方が「住みよい」と感じていると回答。利用しやすく親しみやすい新庁舎は、防災機能の強化や市民サービスの向上を図るとともに、地域とのつながりを深める拠点として、国分寺市の魅力をますます高めることだろう。コーディネーター / 棚橋 早苗高い耐震性と親しみやすさを両立した「木漏れ日グリーン」 の新庁舎

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