RION-JPN-vol14
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 リオンの主力製品のひとつ、補聴器。補聴器の主な種類には「耳あな型」「耳かけ型」「ポケット型」などがある。ユーザーひとりひとりの耳あなに合わせて作る耳あな型オーダーメイド補聴器のシェル(外形部)や補聴器内部の電子部品を除き、その他の部品は樹脂(=プラスチック)で作られている。例えば「耳かけ型」の場合は、耳の外側に触れる筐体ケースをはじめ、電池ホルダ、スイッチなど、が使われている。いわばプラスチックモデルのように部品を組み合わせ、その中に補聴器の音響・電子部品が詰め込まれているという構造だ。 補聴器に限らず、この世の中に存在するほとんどのプラスチック製品は、金属製の「金型」に樹脂を流し込んで冷やして固めて作られている。つまり補聴器の部品それぞれに金型が存在するということだ。 新しい補聴器の開発では、機構設計担当者が設計した機構に、プロダクトデザイナーが意匠などを踏まえた上でデザインを進めていく。この過程では、機能性や見た目の美しさ、使いやすさ、大きさや総重量、耳にかけた時の心地よさ、さらには価格帯などが考慮される。こうして出来上がった設計を元に、樹脂製部品を作るための金型を考案し、具現化するのが、機械デザイン研究開発グループの村上真一、村田拓己、尾澤俊明の3人だ。リオンでは現在、この3人が補聴器における樹脂製部品の金型を設計・製作する業務に従事している。 尾澤は自らの仕事内容について「鯛焼きに例えると、鯛の形に焼くための鉄板を作る仕事です」と説明した。 しかし、補聴器の金型ともなると、想像以上に複雑な金型設計と製造に多くの工程と時間を要すると村上は言う。「製品の仕様を確認してから、金型の設計、機構設計担当者との調整、金型製造に至るまで、ありとあらゆる工程を繰り返し、最後は人の手も使ったミクロンオーダーの仕上げを行います。補聴器の筐体ケース用の金型であれば、鏡面のように磨き上げるのに 30 時間もかかるんです」 ひとつの金型から出来上がる部品の大きさは、小さいもので約 1mm。 例えばドーナツ状 の 形をした部 品 の 直径が 1mmとゴマ粒ほどの大きさの場合、その壁の厚さは最大でも 0.5 mmと非常に薄い。また、耳かけ型補聴器の外側は、鯛焼きのように左右の部品を合わせて形成するが、その際、境目に0.02 mm以上の段差があると、利用者1 機種あたり、平均して約 10 個の部品求められるのは 0.02mm の段差も許さない精度の高さ高品質の樹脂部品を作る金型の存在7村上 真一研究開発センター 研究開発室 機械デザイン研究開発グループ。2000年入社。入社以来一貫して金型の設計、加工に従事する大ベテラン。長年の経験で培った鑑識眼で製品の品質を支えている。村田 拓己研究開発センター 研究開発室 機械デザイン研究開発グループ。2018年入社。以来、生産技術課に在籍し、樹脂部品の金型づくりに従事する。大学では機械工学を学んだ。尾澤 俊明研究開発センター 研究開発室 機械 デザイン研究開発グループ。2014年入社。大学で機械工学を学び、入社後は営業部に配属。1年目はリオネットセンター新宿、東 京営業 所で研 修を行い、2年目から第三聴能販売課へ配属。その後仙台営業所を経て、2021年から現在の部署に。金型まるで立体パズルのように複雑な構成の各種金 型。樹脂を流し込んだ後、固まった部品が 取り出せるよう、可動構造となっている。樹脂製の小さな部品補聴器のチューブの先に装 着する黒い樹脂 製の部品。レンコンのような孔と、外側にスリットが 施されている。1円玉のフチと比 較するとその小ささが分かるが、これほど小さい部品にも金型が存在する。

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