ちから「A I を 用 い た 良 否 判 定 支 援 システム」研 究 開 発 の 舞 台 裏「A I を 用 い た 良 否 判 定 支 援 システム」研 究 開 発 の 舞 台 裏センサが内蔵 自動車のタイヤは、回転する車軸とタイヤをつなぐ部品(ハブ)に、複数のボルトとナットで固定されている。ナットはトルクレンチなどの専用の工具を用いて、規定のトルクで締め付けなければならない。適切に締め付けられていないナットは緩みやすく、走行中に外れて大きな事故の原因となるリスクがある。特にトラックやバスなどの大型自動車のタイヤは、非常に大きく、重いため、走行中に外れて飛んでいけば、人や物に甚大な被害を及ぼすことになる。また、適切に締め付けたナットでも、走行中の振動により徐々に緩むことがある。ゆえに、タイヤを留めるナットは、タイヤの取り付け時だけでなく運行開始前など、定期的な緩みの点検を行うことが求められている。 研究開発センター AI 応用研究開発グループの増成伸一は、大型自動車の車輪脱落事故についてこのように話す。「大型自動車の車輪脱落事故件数は、ここ数年右肩上がりで上昇しています。国土交通省、日本自動車工業会、全日本トラック協会などでは、点検の徹底を呼び掛ける啓発活動を盛んに行っている状況です。では、実際にどのように点検をしているかというと、人の感覚に頼った方法で点検が行われています。タイヤを留めているナットをハンマで叩き、その時の音と振動を人間の感覚で読み取り、このナットは緩んでいるのか、ちゃんと締め付けられているのかを判断するのです。緩んで外れかかっているものは誰がみても明らかですが、締め付けトルクが若干緩んでいる状態は判断が難しい可能性もあります。これに対して、何かしらサポートできないかと考えました。車輪脱落事故発生のニュースを見ていて、発生件数も増え続けていると聞いたとき、これは身近な社会問題だと感じました。この問題を解決する方法として、人の感覚によるところを、AI に置き換えることができないかと考え、『振動計によるAIを用いた良否判定支援システム』の開発を進めています」 開発中の良否判定支援システムは、振動を検出するセンサを備えたインパルスハンマと、振動を解析するAIプログラムで構成されている。「インパルスハンマには力されています。ナットを叩いた時にハンマに伝わった振動を、センサで電気信号に変換して、AI 判定プログラムを搭載したパソコンへ送ります。この振動の結果を解析してAIモデルにインプットすると、ナットの締め付けが正常か異常かが判定されます」 14 取材・文 /馬場 吉成 撮影/赤羽 佑樹IN THE BACKYARD大型自動車のタイヤを留めるナットが緩み、走行中に突然外れる事故が近年増加。この問題を解決するため、振動計測技術に AI 技術を融合させた、ナットの締結状態の良否判定を支援するシステムの開発がリオンで進められている。開発を担うエンジニアに、現状と課題、AI 技術を活用した社会貢献への意欲などについて聞いた。社会問題となっているトラックの車輪脱落事故技術開発、最前線![A I]と[力センサ]を組み合わせ、 車 輪脱落 事故を未然に防ぐ。
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