04132345120 AIに加えハードとソフトの両面から多くの社会課題の解決を目指すインパルスハンマとAIを組み合わせた良否判定支援システム発生件数(件)67564541増え続ける車輪脱輪事故うち人身事故件数(件)14014213112311281力センサを頭部に内蔵したハンマ。測定対象物を叩いた際に生じる振動を力センサで検知して電気信号に変換し、パソコンなどの解析装置に送る。これにより、測定対象物が持つ固有振動数などの振動特性を測定。H26H27H28H29H30H31/R1R2R3R4R50.00240.00250.0026(件)18016014012010080604020国土交通省がまとめた「大型車の車輪脱落事故発生状況(年度計)」のグラフ。前年より件数が減った年もあるが、全体的に上昇傾向にあり、令和 5 年と平成 26 年を比較すると、およそ 3倍に増加している。(国土交通省「令和5年度大型車の車輪脱落事故発生状況と傾向分析について」より)増成 伸一研究開発センター 研究開発室 AI 応用 研 究 開 発グル ープ。2007年入社。オージオメータなどの聴覚検 査 装置や聴覚誘発反応検査装置の設計・開発 に従 事。2025年から AI 応 用 研 究開発グループに所属し、現在に至る。趣味は将棋。一日に一局はオンラインアプリで対人戦を行う。1.51.00.50.0023電圧値(V)時間(S)(年度)測定データインパルスハンマ「 PH-51 」ない課題も多くある。一番の課題は AIモデル構築のためのデータ取得方法だ。「人が変わると、叩く場所や方向、力の大きさなど、叩き方の違いがあり、データに大きな個人差が出る問題が、最初に苦労した点です。差を補正するため、操作者や打撃条件を変えてデータを収集しています。AI 学習用データの前処理方法も引き続き検討しています。 また、現在は一般車両の部品で実験していますが、ナットの大きさや数が異なるため、今後は実際にトラックの部品で実験する環境が必要になります。トラックのナットは、今実験に使っているものよりもかなり大きくて重い物です。叩いた際の波形が異なり、別のデータのばらつきが発生することが考えられます。実際に大型トラックのタイヤだけを購入できないか、協力先を探しているところです」 リオンでは、音響・振動・微粒子計測などの技術を磨き、社会課題の解決に活かしてきた。開発中のシステムについても、トラックのタイヤに限らず、幅広い分野での社会課題の解決を視野に入 「 AI は、人の感覚やコツといったわずかな違いを探して判断することに長けています。AIを用いることで、これまで人の感覚に頼らざるを得なかった点検を、再現性良くかつ自動で判定を支援できるようにします。当社は振動解析を行うためのインパルスハンマを以前から製造していました。AI 技術も補聴器などで既に使用しています。それらを組み合わせて、アレンジしながら実際にシステムを組んでみようというところからスタートしました。 開発では、ハンマでの叩き方や、緩み具合など、色々な違う条件で振動データを取って学習させて、AIモデルを作っていきます。取得するデータは音でも良かったのですが、周囲音による外乱の影響を受ける可能性があります。振動ならばインパルスハンマがあれば取得できるので、まずは振動からやっていくことを考えました。明確に分かる程度の緩みであれば、現在は、ハンマでの打撃結果に応じて自動的に良否判定が出力される段階まで開発が進んでいます。」 本システムは実用化に向けて形を成しつつあるが、今後解決しなければなられている。「車輪脱落事故防止については、これからもシステムの判定精度を高めて実現を目指していきます。トラックに限らず、大きなナットを使っているものは他にもあります。そのようなところでは、このシステムを必要としているでしょう。今は緩みの判定でインパルスハンマにより振動のデータを取っていますが、音や電流など、いろいろなパラメータの活用も今後は検討し、精度の高い良否判定を実現します。リオンは、AI だけでなく、インパルスハンマや騒音計、振動ピックアップなどハードの技術も持っています。ある課題にフォーカスしたときに、ハードとソフトの両面から対応できるのは、非常に大きな強みですね」15 AIによってボルト・ナットの緩みを判定OKNG打音点検で解析に使用した「正常(OK )」「異常(NG )」の波形を重ねたもの。15 回分の集計データをグラフにした。青が「問題がない」ケース、赤が「問題がある」ケース。横軸は時間(S)、縦軸はインパルスハンマの電圧0.00270.0028値( V )。こうして見ると、ナットの緩みが確かに可視化できるのが分かる。
元のページ ../index.html#17