RION-JPN-vol15
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取材後記殿ヶ谷戸庭園 ( 随宜園 )武蔵野の自然の地形を巧みに利用した「回遊式林泉庭園」。大正 2年〜 4年に江口定條(後の満鉄副総裁)の別荘として整備され、昭和 4年には三菱財閥の岩崎家の別邸となる。昭和 49年に東京都が買収し、整備の後、有料庭園として開園。平成 23年 9月に国指定の文化財 ( 名勝)となる。池の水源である湧水は、古くは「次郎弁天の清水」と言われた名水。毎分 37リットルの湧水が池に注いでいる。東京都公園協会殿ヶ谷戸庭園サービスセンターのお二人右がセンター長の櫻岡利雄さん、左が副センター長の佐藤尊成さん。多くの人に殿ヶ谷戸庭園を訪れて楽しんでもらえるよう、庭園保全のための維持管理や、イベントの企画運営などを行っている。 殿ヶ谷戸庭園は、国分寺駅南口を出て徒歩 2 分ほどの場所にある。地形を生かした趣のある景観に対して芸術的な価値が認められ、平成 23 年に名勝として国の文化財に登録された。 「殿ヶ谷戸庭園の特徴は、国分寺崖線特有の地形を巧みに生かした、和洋両方の表情をもつ庭園です」と教えてくれたのは、殿ヶ谷戸庭園サービスセンター長の櫻岡さん。崖の上の明るい芝の庭園から、緩やかな傾斜面の雑木林や竹林、急傾斜を生かした滝や池へと、高低差を活かしてさまざまな様相が自然に連なっているという。庭園内を散策していると、「ここから水が湧いているんですよ」と櫻岡さん。「リオン社屋の裏手にも真姿の池湧水群があるように、湧水は国分寺崖線の大きな特徴の一つですよね。庭園の滝と池の水には湧水を汲み上げて利用しています」 また、武蔵野ならではの植生を守っていることも大きな特徴だ。庭園内には、もともとこの地域に自生していた植物が数多くあるという。「傾斜面のクマザサは草丈などに気を使い、なるべく原風景を思わせる状態になるよう手入れをしています」 この庭園について特におすすめしたい点をうかがうと、副センター長の佐藤さんが次のように答えてくれた。「やはり 200 本のイロハモミジが色づく紅葉の季節でしょうか。殿ヶ谷戸庭園には紅葉亭という茶室があります。一般的な庭園では紅葉は頭上にあります。ですが、紅葉亭は崖の上に建っているので目線の高さいっぱいに紅葉が広がるんです」 国分寺の自然の魅力が最大限に活かされている殿ヶ谷戸庭園。ここを訪れると、先人たちが国分寺に惹かれてきた理由の一端が垣間見えるようだ。コーディネーター / 棚橋 早苗殿ヶ谷戸庭園は、市民運動によって守られた都立庭園として、特別な歴史を持っています。 昭和 40 年代、国分寺駅南口の都市開発が進む中、地域の人々がその豊かな自然に気づき、武蔵野の原風景を後世に残したいという思いから保存活動が始まりました。 現在では市民の憩いの場として親しまれています。 園内は国分寺崖線の地形が生む多様な植生に恵まれ、四季折々の花々が咲き誇ります。 野鳥のさえずり、滝の音、鹿威しや竹林のささめきが響き、静かでゆったりとした時間が流れる、心安らぐ空間でした。(リオンテクニカルジャーナルスタッフ 岡部 雄紀)東京都の重心に位置する「国分寺」、 リオンが生まれ育ったこの地はいったいどんな場所なのか、街の旬な人や場所をリオン社員が訪れその魅力をお伝えするコーナー。今回は国分寺駅から目と鼻の先にある都立殿ヶ谷戸庭園(随宜園)を訪問。この庭園がもつ国分寺ならではの景観についてお話をうかがった。OUR FAVORITE TOWN, KOKUBUNJI リオンのスタッフがナビゲート 18 今 回 の テ ーマ 自然 の 魅 力国分寺の地形や自然を活かした庭園

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