5 個々人に応じたハウリングキャンセラーの仕組み耳の形状や補聴器の音響特性によって異なる初期伝達関数を測定し、音質を損なうことなくハウリングを抑える。ちなみに初期 伝 達関数は、同じ人の右耳と左耳でも異なる。ユーザーごとに測定し、ハウリングキャンセラーに利用することによって、異音への耐性の向上を目指したのだ。初期伝達関数の測定は、補聴器を設定・調整するための専用ソフトを使用し、一人ひとりに対し行うことになる。 「開発の過程で、初期伝達関数を測定する際の試験音についても検討を行いました。なぜなら、測定する際の試験音(ホワイトノイズ)について、音圧を決定する必要があったからです。試験音の音圧を高くし周囲の騒音の影響を低減すると、初期伝達関数の測定精度が高くなる一方、ユーザーにとってはうるさすぎると感じられる可能性があります。つまり、測定精度とユーザーの負担はトレードオフの関係にありました。そこで複数の補聴器販売店に足を運び、それぞれの場所で 1 日の騒音を測定しました。道路に面した騒がしい店舗、など、多様な環境での測定結果を分析することで、試験音の提示音圧を決定しました」 AI NRと改良されたハウリングキャンセラーの実現。こうした側面に加え、新たな機能が追加された。その一つが充電機能だ。 就寝中に専用のケースに入れ充電をしておけば、丸1日使える内蔵充電池を搭載。また、無線機能が強化され、Bluetoothを使った音声ストリーミング機能も追加された。補聴器からスマートフォンやタブレット、テレビの音声が直接聞こえるため、よりクリアな音質で通話や音楽、動画を楽しむことができる。さらにスマートフォンアプリによって、セルフ調整が可能に。細かな音質の調整や、雑音抑制・衝撃音低減などデジタル機能の強弱を、ユーザーが自分の好みと環境に応じて調整できるようになった。 リオネットシリーズ の 後 継 機として開 発 が 進 められ た 新 たな 補 聴 器、リオネット2 はこうして完成したのだ。 2023 年の発売から約2年。開発リーダーである山田新の元には、補聴器販売店を通じて、「音の聞こえ」に対する利用者からの良好な反応が寄せられているという。 リオネット2 が目指したのは “ 暮らしに溶け込む補聴器 ” だ。湯野は言う。「ノイズリダクションもそうですが、ハウリングキャンセラーに関しては、問題が起こらないのが当たり前です。“ここが良くなったな ”と思っていただける機能というよりは、使っている時に違和感を覚えさせないことが1番の理想であると思っています」 より自然な聞こえに対し、飛躍的に性能を向上させたリオネット2。開発チームが目指す理想に向け、補聴器の進歩はこれからも続く。往 来の少ない道に面した静かな店 舗遂に完成した高性能補聴器「リオネット2 」の評判はホワイトノイズを再生し、10秒で測定完了スマートフォンアプリ「スマートコントロール2」ボリューム調整、メモリー切替、ミュート切替のほか、補聴器の電池残量表示などが可能。また補聴器を紛失した際に補聴器の推 定位置を表示することもできる。
元のページ ../index.html#7