1ρ私の相棒 !?EPILOGUE SCIENCE, SCIENCE ! ナビエ・ストークス方程式リオンスタッフのこだわりコラム物体の運動方程式がma=Fで表されるのに対し、流体の運動方程式がナビエ・ストークス方程式。この式を形作った、フランスの数学・物理学者「クロード =ルイ・ナビエ」とイギリスの数学者「ジョージ・ガブリエル・ストークス」の 2 人の名前から名付けられている。この式は時間項、対流項、圧力項、粘性項から成り、現在も一般解が見つかっていないミレニアム懸賞問題のひとつである。兵藤 京香微粒子計測器事業部 開発部。2023年入社。現在は、主に液中微粒子計測器の設計変更や要素研究開発を担当している。最近のやりたいことは、久しぶりに種子島に行き、種子島の穏やかな空気を感じながら、満天の星空を眺めること。ナビエ・ストークス方程式リオンを支える、理科や数学好きなスタッフたち。第 11 回は、流体力学を司る難解な数式と、不思議な付き合いを続ける技術者が登場!気 ( 粘性 ) の変化で流れがどの様に変化して 私がナビエ・ストークス方程式と最初に出会ったのは大学の流体力学の授業でした。黒板に書かれたこの式を見て思ったのは「へえ、こんな式があるんだな」という程度で、当時はこの式が自分の人生に関わってくる存在になるとは、これっぽっちも思っていませんでした。 この方程式は、水や空気といった流体が時間とともにどの様に動くかを表した式です。時間項、対流項、圧力項、粘性項の 4 つの項で構成されており、圧力や液体の粘りいくかを表しています。天気予報で大気の流れを予測する計算で使われていたり、飛行機の翼周りの空気の流れを解析、配管設計時に配管内の水の流れを解析したりと、実は私たちの身近なものに使用されている式なのです。 大学 3 年生になり、私は流体解析系の研究室に配属されました。するとここから私とこの式との関係が一変します。研究室では、毎週「乱流入門」という本を題材に、学生同士で勉強を進める輪講の時間がありました。この輪講は内容を読むだけでなく、数式の導出も行いながら進めるスタイルで行われていました。その中で私はこの式と再会したのです。導出を前提とした気持ちで向き合うと「うわぁ、長くよくわからない変数で出来ているぞ」という気持ちになったことを今でも覚えています。案の定、導出は難しく、解説を聞いても全然わからず、次第にこの式のことが嫌いになっていました。でも大学院までの約 4 年間、毎年この式の導出を行う時期があり、そのおかげなのか、年を重ねるごとにこれまでの苦手意識はいつの間にか薄れ、「あれ、意外と嫌いじゃないかも」と思うようになっていったのです。なぜ苦手が薄れたかといえば、この式を構成している 4 つの項を切り分けて 1 つずつ考えれば良い、ということを教えてもらったからだと感じます。1 つの式として見ると複雑に感じられますが、単体の項で見ると変数も少なく考えやすくなるのです。つまりこの式との付き合いによって、数式と向き合う私の意識が大きく変化したわけです。 また、この式は導出されてから約 180 年が経過しているものの、いまだに一般解が見つかっていないという大きな特徴を秘めています。そして、懸賞金がかけられている 式 ( ミ レ ニ ア ム 懸 賞 問 題 ) の 1 つ な の です。謎の根幹は、方程式の中に含まれる対流項の非線形性にあります。この項は流れの速さそのものが次の瞬間の流れの速さを決めてしまうという構造を持っているため、小さな乱れが起こるとその乱れが時間とともに増幅されていくことがあります。その結果、流れは次第に予測が難しい振る舞い( 乱流 ) を示すようになっていくのです。この「乱流」が解を求める難しさにつながっています。加えて、この方程式は時間と空間の両方で連続的に変化する量を扱うため、その振る舞いを無限に細かいスケールまで考える必要があるのです。その結果、解が常に滑らかに存在するのか、それとも途中で発散する ( 無限大になる ) のかを一般的に示すことが極めて困難であり、いまだに一般解が無いのです。方程式が内包するこうした難しさにも、私はきっと魅了されているのでしょう。 さらに視点を変えてみると、私は大学時代「ロケット研究会」というサークルに所属しており、毎年種子島で行われるロケットコンテストに参加していました。サークル活動内で直接この式を解いて、流体の動きを解析することなどはしていませんでしたが、ロケットなどの分野にこの式は関係しており、解析で使用していたソフト内の計算でもきっとこの方程式が使われていたはずです。思えば、小学生くらいの頃からロケットや人工衛星、宇宙や星といったこの式が関連するものに興味を持っていました。そして現在も微粒子計測器という流体を扱う製品に携わっています。そう考えると、子どもの頃から現在まで、私はこの方程式と不思議な距離感を保ちながら過ごしてきたとも感じられます。 ひょっとすると、この式とは離れられない運命 / 相棒なのかもしれないと思ってしまいます。そして今後、この「ナビエ・ストークス方程式」と私の人生がどう関わっていくのか、楽しみです。※ ※※ ※19No. 011文 /兵藤 京香∂ 2ui∂xj∂xj∂p∂xi+ν∂ui uj+∂t∂ui∂xj= −理数好きなもので。
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