4 「 VX-14D 」を完成させるには、超えなければならないハードルが幾つもあり、決して簡単な開発ではない、と馬屋原は見ていたという。 車などの工業製品から食品の製造まで、工場では様々な設備機械が稼働している。それが故障しかけている、あるいは故障している場合には、通常とは異なる振動を発する。その微細な振動の違いを診断するのが、故障診断プログラムだ。 故障の診断は、大きく構造系と摩耗系の 2 つに分かれる。構造系を診断する場合は、回転する機械の軸がずれてしまっているかどうかを診る。例えばカレーのルーを攪拌する棒が揺れていると、やがて棒を回すモーターの破損につながる。ミスアライメントと呼ばれる状態だ。また回転する軸にゴミが付着していたり一部が欠けていたりする状態でも、正常な回転はできない。これをアンバランスと呼ぶ。 対して摩耗系の診断は、回転する構造物には欠かせないベアリングを診る。ベアリング内部の転動体が壊れていたり、外側のフレーム部分に摩耗や変形があると、エネルギーを正しく伝えられなくなり、大きな故障を誘発させてしまう。そして構造系に問題が起きると、摩耗系も同時にトラブルを起こす可能性が高まる。 その両方を診断する機能をマシンダンは有し「正常」「注意」「異常」の判断を下していた。さらに、診断する設備ごとに判定基準を設定する必要がなく、機械の諸元に依存しない計算値で判定をしていた。構造系は、故障によって生じる振動速度の周波数スペクトルと振動全体の大きさを示す実効値を、摩耗系は時間とともに揺れ動く振動加速度信号が「どの大きさでどれくらい現れるのか」を表すために、振幅確率密度関数などの考え方が用いられていた。「それだけではなく、実際にお客様のところに足を運び、取得したデータを基に理論を組み立てているので、そのデータを見ていかないと、数式がなぜこうなっているのかが分からないものも多々ありました」(張) なぜ、この数式が使われているのか。理論の中の数式は、どうなっているのか。数式の中のパラメーターは、なぜこれがいいのか。コンピュータ上で解けるものもあれば、実際に機械で測らないと分からないものもあった。リオンにはお客様が所有するような生産設備がなかったため、故障状況を再現可能な機器を用いて、理論と実際の動きを紐付けていく作業が続いたのだ。 その中で張は、現在のように大量の演算を行うことができない当時の CPUで、マシンダンがいかに軽い処理で分析時間を短くする工夫を施していたのかを知った。「いかにシンプルなパラメーターで検知するか。今ならたくさんのデータを取り込んで AI に処 理をさせ、OK か NG かを出すことはできると思います。しかし『マシンダン』では、少ないデータを駆使し、処理能力が低い当時のマイコンで判断させるために、とてもシンプルな演算処理を活用していたことが分かりました。“これでいいんだ”という理由が、実際に自分でデータを取って理解できるようになったのです。これに気づくまでにとても長い時間がかかりましたけどね」自動で診断結果を表示画面を切り替えるだけで、診断箇所の測定値を表示故障診断プログラム「 VX-14D 」故障診断画面振 動の振 幅 波 形 情 報および周波 数 分析(FFT 分析)結果に基づき、構造 系および 摩 耗 系それぞ れの故 障レベルを1 ~ 99の数値で評価。レベルに応じた3つの故障段階(正常、注意、異常)を表示し、設備の不具合や故障の前兆、将来への影響を予測することができる。「 VX-14D 」による故障診断の流れ診 断はボタンを押すだけのシンプル操作。画面の案内に従うだけで、約 15秒で診断結果とコメントが表示される。自動判定に加え、FFT 分析結果や振幅波 形データも同時に確 認でき、直 感 的な操作性と高度な解析機能を両立している。診断開始ボタンを押す(MENU/ENTER キー)小さな CPU に詰め込まれた工夫の数々をつぶさにひも解く正常:26 故障レベル:1~29 背景:緑色注意:36 故障レベル:30~59 背景:黄色異常:99 故障レベル:60~99 背景:赤色診断中故障診断時画面(構造・摩耗)確認メッセージ故障診断結果画面故障診断画面
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