最先端レポート補聴器の防水技術
1986年
技術1:防水音響膜の開発
防水型補聴器開発の第一の鍵は、音を通し、汗や水を通さない防水音響膜の開発でした。
優れた音響性能(音圧レベルの損失3dB以内)を損なうことなく、水深1mでの圧力に耐えられる防水化を実現するため、様々な材質と製法による試作検討を繰り返しました。
最終的に宇宙服にも使われた多孔質フィルムを採用するとともに、最大孔径10μm(100分の1mm)多孔質膜の製造技術を開発することによって、この厳しい条件をクリアすることができたのです。

防水音響膜概念図

開発した防水膜の音響性能特性
技術2:防水構造の開発
もう一つの鍵は、他の電子機器と違う補聴器ならではの防水構造の開発です。高いパッキン圧力が可能な金属構造の腕時計と違い、プラスチック構造の補聴器では、よりシンプルな設計で防水のためのパッキン圧力を低くする工夫が必要でした。また、音響性能の面では、幅広い周波数帯域への対応が求められました。これらを実現した製品構造は、その後の補聴器の基本構造の一つとして、現在も使われています。

防水型補聴器 HB-35PTの分解構造図

1994年
技術3:空気電池への対応
その後、環境汚染の問題から水銀電池が廃止され、補聴器では空気電池の使用が一般的になります。しかし、防水型補聴器が空気電池に対応するためには、防水性を維持したまま、空気電池に十分な空気を供給する必要がありました。リオンは、1時間に5ml以上の空気が通過でき、かつ強靭な防水膜を開発することで、この課題も克服し、1994年に空気電池に対応した新しい防水型補聴器を発売しました。

世界初の空気電池を使用できる防水型補聴器 HB-54

2005年
技術4:オーダーメイド補聴器の防水化
耳かけ型の防水型補聴器に加えて、耳あな型のオーダーメイド補聴器の防水化も図りました。このタイプの補聴器の場合、マイクロホン側だけでなく、イヤホン側の防水化も大きな課題でした。イヤホン側には、マイクロホン側より、はるかに高い音圧が求められるため、この音圧が損失なく、また、音質に影響を与えることなく通過できるイヤホン側の防水膜の開発は、困難を極めました。最終的に、音を透過させる膜から、振動を伝達する膜へと、発想の転換をすることで、新たな防水膜を開発し、オーダーメイド補聴器の防水化を実現しました。
この補聴器はイヤホン側にも防水膜を搭載していることから「洗える補聴器」であることも大きな特長です。耳あかや汗を洗い流すことができるので、常に清潔な状態で使用することが可能になりました。

耳あな型オーダーメイド防水型補聴器 HI-G4WE

2013年
技術5:重度難聴用補聴器の防水化
これまで困難であった重度難聴用補聴器の防水化も実現しました。
防水・防じん保護等級IP65/IP68※に適合し、高度・重度難聴にも適応可能なパワータイプでありながらコンパクトサイズを実現。さらに、多彩なデジタル機能を搭載しました。
※JIS C 0920:2003・IEC 60529 電気機械器具の外郭による保護等級

防水型補聴器 スプラッシュ