聴能設備機器

教室のような小規模システムからグラウンド、体育館、ホールや劇場、交通機関などで利用できる補聴援助システムをご紹介します。

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FM補聴システムとは

FM電波は、ある程度離れた距離まで音質を劣化させることなく到達でき、機器以外に関してほとんど「工事」の必要がないためコスト効率に優れるなどの利点があり、古くからこの方法は補聴のための手法として用いられていました。その意味でも電波はとても便利ですが、便利であるがゆえに“電波法”という法律に従って使用されなければなりません。
電波法の目的は、その第一条に記されています。「この法律は、電波の公平且つ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的とする。」
また、電波を利用する場合は、“電波法施行規則”の中で標準規格が定められており、許可を得て製造等され、運用されなければなりません。補聴に関する規格としては平成9年に“特定小電力無線局 補聴援助用ラジオマイク用無線設備 ARIB STD-T54”が策定され、平成19年に169MHz帯が追加され現在に至っています。
補聴器販売店などでの販売や、障害者総合支援法による交付によって入手できる“FM補聴器”はこの169MHz帯であることがほとんどです。

構造と性質

FM補聴器と言っても特殊な補聴器である必要はありません。FMシステムは一般のワイヤレスマイクシステムなどと同じように“送信機/トランスミッター”と“受信機/レシーバー”からなっています。ただ、受信機と補聴器を接続する方法が直接接続であったり、あるいは“ネックループ/タイループ※”を介して補聴器の“T-コイル/誘導コイル”で磁気結合したりすることで結果として補聴器に電波を通じた音響信号を得ることができる、という共通した構造を取っています。
規格としては特定小電力10mW以下ですが、送信機が小型のワイヤレスマイク型や据置型の送信機が存在し、個々に電波を放射できる能力「空中線電力」が存在し、かつ受信感度があれば目安として到達距離(使用可能範囲)をある程度定義することが可能となります。
標準規格では、169MHz帯に対してM01からM16まで全部で16のチャンネルが割り振られています。しかしFM電波はその性質により近似したチャンネルを同時に使うことはできません。到達距離内では、使用できるチャンネルは限られてくる、という意味になります。これを無視すれば結果として“混信”や“干渉”といった問題が発生してきます。また、電波は「公共の福祉」に供されるものですからそこに存在する電波を受信することは制限されません。
利用者は、こういった性質をよく理解し活用する必要があります。

※タイループは、一般名称「ネックループ」に対するリオン株式会社の商品名です。

グループとチャンネル

169MHzは下表のようにグループとチャンネルといった概念があります。例えば、限られたエリアでグループ1を選択した場合はM01, M06, M09, M13, M15の同時使用は可能であり、それ以外の近似したチャンネルを使用する場合は混信や干渉に対して十分配慮した利用が必要になる、という意味です。
また、標準規格では、グループ3については公共施設等で案内放送用に使用することが基本であり私的な使用は可能な限り避けることや、案内放送にはその中のM05(169.5125Hz)を使用することが案内されています。

169MHzワイヤレスシステム 周波数一覧

No. 周波数 グループ
1 2 3 4
M01 169.4125      
M02 169.4375      
M03 169.4625      
M04 169.4875      
M05 169.5125      
M06 169.5375      
M07 169.5625      
M08 169.5875      
M09 169.6125      
M10 169.6375      
M11 169.6625      
M12 169.6875      
M13 169.7125      
M14 169.7375      
M15 169.7625      
M16 169.7875